情熱、哀調、多彩に 宮良長包音楽祭


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
出演者が舞台にそろい、来場者と声を合わせて「えんどうの花」などを歌った=1日、那覇市のパレット市民劇場

 20年の節目、“長包メロディー”に命を吹き込んだ。第10回宮良長包音楽祭(沖縄日伊オペラ主催)が1日、那覇市のパレット市民劇場であった。泉恵得(テノール、琉球大名誉教授)を中心に1995年から2年に一度、開催されてきた声楽家と合唱団の祭典。独唱、重唱、合唱の全28曲で、明治から昭和の激動期(1883~1939年)を生きた長包の生涯をたどった。

西洋音楽と沖縄のメロディーを融合して“沖縄音楽の父”と呼ばれ、昨年生誕130年を迎えた長包。県内外で活躍するベテラン、中堅から新人まで70人余の演奏家が多彩な歌曲を奏で、来場者の拍手と歓声に包まれた。
 長包の第1作「笛」を桑江律子(ソプラノ)が歌って幕が開く。デイゴの燃えるような色彩を情熱的に描く「赤ゆらの花」は新島奈美子(同)が歌う。仲本博貴(バリトン)は哀調を帯びた旋律の際立つ「泊り船」を奏でた。
 八重山の代表的な民謡「とぅばらーま」は泉が豊かな声量で滋味ある歌声を聞かせた。「夕立」などを與那嶺なつき(ソプラノ)が歌った。
 沖縄、八重山の民謡を題材にした「嘆きの海」「荒磯の歌」などは沖縄の風土を感じさせる旋律で来場者を引き込んだ。糸数剛、呉屋高志、松田貴子、山里瑠美、峰井浩子、金城泰子、泉紀子、仲村渠和美、泉茉莉、与那原さゆり、金城由記子、百名加奈江らも出演した。
 合唱曲に編曲された「すみれ」などをひばりが丘女声コーラスが、「なんた浜」「琉球木遣歌」を混声合唱団フォンターナが披露した。「国頭サバクイ」を題材にした「琉球―」は、ピアノに當間藍、太鼓に大底紀子が出演。力強いリズムと重層的な歌声で来場者を引き込んだ。
 最終盤は出演者が舞台にそろい、「えんどうの花」「安里屋ユンタ」を合唱。
 来場者も声を合わせ、会場に手拍子がこだました。時を越えて受け継がれる長包メロディーの魅力をあらためて発信し、幕を下ろした。(宮城隆尋)