八重山教科書問題、仲村元教育長に聞く 是正要求で悪影響も


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「是正要求されれば、子どもたちの教育環境が悪化する」と話す仲村守和元県教育長=13日、嘉手納町

 八重山教科書問題で文部科学省は2月中にも竹富町に直接、是正要求する。2007年、高校教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」について、日本軍による強制の記述が削除された。当時の県教育長を務め、何度も同省に抗議した仲村守和さん(66)に話を聞いた。

 ―竹富町の教育環境の現状は。
 「県教育庁のデータを分析したところ、児童生徒の問題行動件数がゼロで、トップレベルの教育が行われていることが分かり驚いた。13年度全国学力テストでは小学校の全教科で県平均を上回り、国語Aは全国平均を超えていた。中学校は全て全国平均を超え、国語Aについては全国トップの秋田県をしのいでいる。下位の子が少ないのも特徴だ。先生が一人一人に寄り添い、遅れがちな子には日常的に補習している。町内に塾がなく、先生自作の家庭学習帳を使うなど、家庭学習の手だてを一生懸命考えて取り組んでいる」
 ―国は「教育の充実」を定める教科書無償措置法に違反すると指摘する。
 「中学卒業後に島を出なければならない厳しい現実を子どもたちは自覚している。だからこそ中学生まで家庭で大切に育て、学校や地域、行政も連携してしっかり支えている。頑張っている小さな島を強権で押しつぶすような是正要求は断念すべきだ。是正要求されれば、町はその対応に力をそがれる。教育がおろそかになり、かえって子どもたちに悪影響を及ぼす」
 ―道徳の教科化や検定基準厳格化など国の教育への介入が進んでいる。
 「07年当時、県教育長が国に自ら乗り込んだのは初めてだった。『一県の教育長が国に盾突くのか』と全国から電話やメールで多くの抗議を受けた。だが国が右傾化する際、最初に手を付けるのが教育だ。今、教育が瀬戸際にある。沖縄の基地被害についてほとんど触れていない育鵬社を沖縄の子どもたちが使っていいのか。採択方法も恣意(しい)的でおかしい」
 ―国は県教委に対しても是正要求を検討している。
 「今まで通り、3市町の話し合いによる解決を求めればいい。焦っている文科省に合わせて結論を出す必要はない。納得するまで議論してほしい」(聞き手 与那嶺路代)