歌で伝える琉球の誇り オペラ「アオリヤエ」


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最終盤、琉球の誇りを歌うアオリヤエ(宮城美幸)と尚寧王(西條智之)の二重唱=22日、浦添市てだこホール

 歌劇「アオリヤエ 尚寧王妃の詩~ようどれに眠る愛~」が22、23の両日、浦添市てだこホールで上演された。中国と日本、大国のはざまでほんろうされる琉球、国難の時代。首里と浦添の二つの尚家の懸け橋となった、尚寧王と阿応理屋恵(アオリヤエ)の愛の物語。

作曲を手掛ける新垣雄と演出の馬場紀雄が二人三脚で練り直した“琉球オペラ”は、物語が時代を超えて伝える琉球の誇りを、新たな輝きで描き出す。大勝秀也が指揮したオーケストラは、琉球のメロディーを随所に織り込んだ音楽を巧みに奏で、ソリストたちの熱演と相まって来場者を物語に引き込んだ。
 薩摩が侵攻し、落城する首里。尚寧王(西條智之=バリトン)は弟・尚宏(喜納健仁=テノール)と共に江戸へ上る。王が不在となる間、王妃のアオリヤエ(宮城美幸=ソプラノ)が国を治めることになる。
 薩摩は琉球に課税し、国防を禁じるなど無理な要求を重ねるが、アオリヤエは妹・月嶺(川満理加=ソプラノ)らの怒り、絶望をオモロを歌ってたしなめる。2人と侍女・蓮渓(與那嶺なつき=同)との歌声の調和は、琉球の誇りを伝える三重唱だ。
 尚寧は帰還するが、旅で尚宏や慕っていた謝名親方(前川佳央=バリトン)を亡くしたことを悔いる。悲嘆に暮れる王を前に、アオリヤエは歌う。〈琉球には「うた」がある。武力や富で劣ろうとも、うたによる心のつながりがあれば、琉球の誇り、ともしびは消えない〉。物語の最終盤、アオリヤエの歌声は力強く会場を満たす。
 終幕は静かな曲調、出演者たちの動きや照明も抑えた展開だが、一同で唱和する歌声がこだまし、迫力を感じさせる。その描き方は当時から現在まで続く琉球、沖縄の史実に寄り添う。“国難”を乗り越えるための手だてとしての誇りを、歌で伝えようという気概が幕切れににじんだ。
 アオリヤエの母・坤功は小波津美奈子(ソプラノ)、三司官の浦添親方は田里直樹(テノール)、名護親方は具志史郎(バリトン)、首里尚家の末えい玄常は大城治(バス)が務めた。(宮城隆尋)