組踊「雪払」80年ぶり復活へ 豊見城・伊良波舞台の忠孝物


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豊見城が舞台となる組踊「雪払」宇栄原本の台本完成を報告する當間沖縄芸能史研究会会長(右)と首里市組踊保存会長=2月23日、豊見城市立中央公民館

 【豊見城】豊見城市組踊保存会(首里良三会長)は、同市伊良波が舞台の那覇市宇栄原に伝わる組踊「雪払(ゆちばれー)」の台本を補作し、完成させた。来年2月には約80年ぶりとなる豊見城での“復活上演”が予定されている。

 市教育委員会が一括交付金を活用し、同保存会に委託した事業で、沖縄芸能史研究会の當間一郎会長を委員長に台本復元検討委員会で取り組んだ。
 上演に向けて機運を高めようと、當間会長を講師に招いた市民文化講演会「組踊『雪払』と豊見城について」が23日、市立中央図書館で開かれた。
 當間会長によると、現存する組踊「雪払」の台本は、宇栄原本のほか、恩河本小禄御殿本・眞境名由康創作本、今帰仁御殿本の3種類がある。
 宇栄原本は、父・伊良波大主が不在の大雪の日に、主人公の長男・百十が継母のいじめで、海に魚や貝を捕るよう命じられる。
 務めを終えた父が雪の中で倒れている息子を見つけ、継母をただすと、継母が改心。その後、百十が立身出世する内容で、豊見城から糸満にかけての風景が盛り込まれているという。
 宇栄原では1929~30年ごろまで、東組が村踊りで組踊を上演していた。台本は、かつて出演した赤嶺信吉さんが移民先のブラジルで書き起こし、73年に沖縄に送付。宇栄原の関係者から當間会長がこの台本を確認し、豊見城村史(98年)の第9巻文献資料編に掲載した。
 當間会長は「現存する66番の組踊に『雪払』が3種類もあるのは、ウチナーンチュの雪への特別な思いがあるからかもしれない」と語り、「忠孝節義の組踊の思想が存分に盛り込まれている」と強調、復活上演を期待した。上演に取り組む首里会長は「市の組踊として普及させたい」と意欲を見せた。