“小太郎劇”を継承 平成大伸座「丘の一本松」で旗揚げ


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老馬をけなす馬喰松(右、川満聡)に傷つく渡久地小の主(左、八木政男)=2日、北谷町のちゃたんニライセンター

 大宜見小太郎、静子夫妻の娘・大宜見しょうこが代表を務める「平成大伸座」の旗揚げ公演「丘の一本松」(小太郎作、八木政男演出)が2日、北谷町のちゃたんニライセンターであった。北谷町自主文化事業実行委員会の主催。八木ら往年の面々に加え、川満聡ら新顔も出演。笑って泣ける「小太郎劇」を継承しながら、新たなカラーを打ち出した。

 頑固な渡久地小の主(すー)(八木)は、息子の良助(高宮城実人)をいつまでも子ども扱いする。アンマー(真栄田文子)が仲を取り持とうとするが、良助は家を飛び出す。追い掛けた主は、一本松の下で息子への思いを吐露。松の陰で聞いていた良助は親の思いを知る。
 長年良助役だった八木が、小太郎が演じていた主役を務めた。家の奥から登場して頭を拭く場面は、小太郎をほうふつとさせた。語り口は小太郎とは別の味わいがある。
 馬喰松(うまばくまちゃー)役の川満は、老いを気にする主の前で老馬をけなし、笑いを誘った。本格的な沖縄芝居は今回が初挑戦。言葉に苦労したというが自然体で演じ、今後の出演にも意欲を見せた。
 良助が松の下で出会う老人を演じた知名剛史は、もう少し年寄りらしい味が欲しかった。北谷町文化協会しまくとぅば部の高校生も村人役で出演した。地謡は徳原清文、恩納裕。
 芝居の前には、小太郎が得意とした「戻り駕篭(かご)」「鳩間節」を実人、知名、座喜味米子、当銘由亮が踊った。企画したのは、小太郎の孫でミュージシャンの大宜見拓馬。大宜見夫妻が「幸せの舞」を踊る映像も映し“共演”させた。ロビーでは2人の衣装などを展示した。
 今年は大伸座結成65年、小太郎没後20年の節目に当たる。これほど長い歴史を誇る劇団はまれだ。時代が変わる中、小太郎劇の味わいを保ちつつ、どう発展させるか。新たな大伸座はかつての存在感にはまだ及ばないが、今後の深化に期待したい。(伊佐尚記)

※注:高宮城実人氏の「高」は旧字体