県と災害派遣医療班所属病院 沖縄のみ協定未締結


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 災害時に被災地に駆け付け、救急治療を行う県内13病院の災害派遣医療チーム(DMAT(ディーマット))について、県が同チームの所属病院と協定を締結していないことが、8日までに分かった。協定がないのは全国で沖縄県だけ。出動要請の手続きや指揮系統、損害賠償などを取り決める協定がなければ、出動までに時間がかかる可能性があり、隊員の身分保障が不安定となる。

 厚生労働省が定める日本DMAT活動要領では、DMATの活動は「都道府県と医療機関で締結された協定及び厚生労働省や文部科学省、都道府県の防災計画に基づく」とされる。
 所管する県医務課は「締結は遅れているが、案はできている。年度内を目標に進めており、できるだけ早く締結したい」と説明する。
 都道府県が医療機関と結ぶ協定では、出動要請の手続きや指揮命令系統、活動の範囲や内容などを定める。活動に要した費用弁償や隊員が死亡、負傷した場合の損害賠償についても定める。
 協定がなくても活動はできるが、活動中に隊員が負傷や死亡した場合、補償に関する取り決めが明文化されていないことで身分保障が不安定となる。出動に要した費用弁償の手続きも、県ではなく指定医療機関が担うことになるなど、医療機関の負担が大きい。
 県内唯一のDMATインストラクターで沖縄赤十字病院の佐々木秀章救急部長は、「協定がないと出動できないわけではないが、現在は公のお墨付きがない状態で、身分保障がないのは問題だ。早急に締結してほしい」と述べた。(佐藤ひろこ)

<用語>災害派遣医療チーム(DMAT)
 大地震や津波、航空機事故などの災害時、被災地に迅速に駆け付け、救急治療を行う医師や看護師らによる医療チーム。専門的な訓練を受け、おおむね48時間以内に活動できる機動性を持つ。広域医療搬送や病院支援、域内搬送、現場活動などを行う。国は2005年から養成研修を始め、県内のDMAT登録者は本年度114人、13病院19チームある。