沖縄から岩手・宮古署出向 當山さん 仮設住宅、毎日巡回


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仮設住宅を回り、住民に振り込め詐欺への注意を呼び掛ける當山徳二さん(右)=2月28日、岩手県宮古市の仮設住宅

 「こんにちは。お変わりないですか」。静けさが漂う岩手県宮古市の仮設住宅に、元気な声が響く。声の主は沖縄県警から宮古警察署に出向している當山徳二(やすじ)さん(32)=西原町出身=だ。

出てきたお年寄りの顔に、次第に笑顔が浮かぶ。2013年4月に赴任して以来、ほぼ毎日、仮設住宅を巡回し、住民の安全に気を配っている。當山さんは「宮古には温かい人が多い。みんなが安心して生活できるように頑張りたい」と意気込んだ。
 現在、宮古署の警務課被災地対策隊地域安全班に所属している當山さんは、同署が管轄する宮古市と山田町の仮設住宅のうち、地域の交番だけでは目が届かない場所を中心に、100世帯以上を巡回している。
 震災時、沖縄県警機動隊にいた當山さん。大きな被害に遭った被災地を支援したいと出向を望んだが、実現したのは昨年のこと。「人を助けるのが任務。自分にできることをしたくて、すぐにでも現場に行きたかった」
 訪れた岩手では、テレビで見ていた以上に復興が進んでいない現状を目の当たりにした。道はできているが住宅やまちづくりは進んでいない。仮設住宅の住民から「いつになったら出られるのか」と、やり場のない不満をぶつけられたこともあったという。
 そんな中、當山さんは、仮設住宅の住民から「夜眠れないからお守り代わりにしたい」と名刺を求められた。「私の名刺に希望を持ってくれた。少しでも住民の不安を取り除きたい」との思いを強くした。
 2月28日、市内の全35世帯の仮設住宅で、振り込め詐欺への注意を呼び掛けるチラシを配って回った。住民の田代清治さん(72)は「このへんは夜真っ暗だから(回ってくれると)安心だよね」と、笑顔を見せる。
 當山さんの宮古署での勤務は1年で、3月末で任期を終える。被災地への支援は、これからも必要だと感じている。當山さんは「次の職員にも思いを引き継ぎたい」と話した。(田吹遥子)