文科省が竹富町教委に全国初の是正要求 八重山教科書


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 【東京】文部科学省は14日、八重山採択地区協議会が選定した保守色の強い育鵬社の中学公民教科書を拒否して別の教科書を使用している竹富町教育委員会に対し、地方自治法に基づく是正要求を出した。また、同町委に是正要求をしなかった県教育委員会に対しても「重大な事務の怠慢だ」として同日付で指導文書を発出した。

下村博文文科相が同日の会見で明らかにした。国が市町村に対して直接、是正要求するのは初めて。
 是正要求に従わなくても罰則はなく、竹富町教委はこれまでも文科省の指導に応じていないことから、今回も不服申し立てなどの措置を取る可能性が高い。
 会見で下村氏は「町教委が法律上の義務を果たすのを見守りたいが、動向次第では適切な判断をする必要が出てくる」と述べ、是正要求に竹富町教委が従わない場合は、違法確認訴訟を提起することも示唆した。
 竹富町教委は24日の定例教育委員会で対応を協議する。来年度の教科書は篤志家の寄付で用意した東京書籍版を4月の進級時に配布する予定だ。
 同省は2013年10月、県教委に竹富町教委への是正要求を指示したが、県教委が結論を先送りしたため、異例の強硬措置に踏み切った。下村氏は14日の記者会見で「法治国家として違法状態を解消するのは当然のことだ」と述べた。
 地方自治法では、国は都道府県に対して市町村に是正要求を出すよう指示できるが、緊急性を要する場合は、国が直接、市町村に是正要求を出せる。文科省は県教委が結論を先送りにしたことで来年度の授業に間に合わないと見て、直接是正要求を出す際の要件となる「緊急、その他特に必要がある場合」に該当すると判断した。
 教科書採択をめぐっては、教科書無償措置法で同じ地区内で教科書を統一するよう定めている一方、地方教育行政法では採択権限は各教育委員会にあるとしている。
 竹富町教委の慶田盛安三教育長は「県の対応がまだ出ていないのに、県を飛び越えて是正要求するのは筋違いだ。かえって混乱を招く」と批判。是正に応じるか、係争処理委員会に申し立てるかなど今後の対応については「県や教育委員と対応を協議したい」と述べるにとどめた。
 文科省の指示に対して態度を保留してきた県教委の諸見里明教育長は、今回の是正要求に「残念だ。19日に県教委があるので、(対応を)議論したい」と述べた。

<用語>是正要求
 地方自治体などの事務処理に法令違反があるときや、明らかに公益を害していると認められる場合に、国が是正を求める制度。地方自治法に規定がある。自治体側は改善措置を取る法的責任を負うが、従わなくても罰則はない。市町村への是正要求は都道府県を通じて出されるのが一般的だが、特に必要があると認められれば、国が市町村に直接、要求できる。地方教育行政法も文部科学相が教育委員会に是正要求できるとしているが、児童生徒の教育を受ける機会の侵害が明らかな場合に限られている。