モノレール延長、「石嶺先行」に含み


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モノレール延長ルート用地取得率

 沖縄都市モノレール延長事業で石嶺駅(仮称)を他の3駅より先に開業する案に関し、県と那覇市、浦添市、沖縄都市モノレール社の4者は、採算面などから困難との結論に達した。一方、先行開業を求めてきた那覇市は、用地取得の現状から「2019年春予定の全面開業の遅れは必至」だとして、先行開業をなお期待している。

沿線部分の用地買収が計画の15年3月末までに終わらない場合は、議論が再燃しそうだ。
 4者が先行開業に関する担当者レベルの勉強会を開始したのは昨年7月。安全性を考慮すると先行開業は最も早くて18年夏との見通しだが、設備投資と運輸収入を比べた場合、19年春までの半年間では費用対効果が低いとの結論に達した。

一筋縄には
 ただ4者は先行開業を完全に断念はせず、最終的には「延長事業の進捗(しんちょく)状況や取り巻く状況の変化が生じた場合に備え、迅速に対応できるよう勉強会を継続する」と含みを持たせた。
 県の吉田繁都市モノレール室長は「4者の意思を統一、納得できる表現になった」と最大公約数の表現に落ち着いたと説明した。
 先行開業を再検討する「状況の変化」として想定しているのは、延長ルートの用地買収の遅れだ。事業費ベースの用地取得率は3月末見込みで首里―石嶺駅間は97%とめどがついている。一方、浦添市が担当する区間のうち、経塚駅近くの市道沢岻石嶺線で18%、県が担当する前田―浦西駅間は28%と低い。
 吉田室長は「19年春の全面開業目標は変わらない」としつつ、「例えば予定地で墓の移動が必要な場合、所有者が不明な場合などもある」と一筋縄にはいかない状況も明かす。

19年春を疑問視
 那覇市は4者の連絡協議会で先行開業を困難視する結論に同意したものの、先行開業を諦めてはいない。先行開業に期待する地元石嶺地域では過去に住民大会で、延長ルート決定に対し石嶺に3駅を置く案を求めていた経緯もあり、石嶺駅先行開業は「せめてもの要望」という認識だ。
 市は石嶺駅までの用地取得がほぼ済んでいる一方、浦添市内の用地買収では難航が予想されるとして、19年春の開業予定を疑問視する声もある。
 全線開業が遅れた場合に関して市は「先行開業の期間が長くなればモノレール社の経営にとってもメリットは大きくなる」と指摘。「県も19年春に間に合わない可能性は織り込み済みのはずだ」との声も漏れる。
 4者の勉強会は今後も継続される。用地取得作業の進展と併せて、議論の行方が注目されそうだ。
(関戸塩、古堅一樹)