好対照、配役の妙 朝薫作「護佐丸敵討」「女物狂」2本立て


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 国立劇場おきなわの組踊公演「護佐丸敵討」「女物狂」が3月22日、浦添市の同劇場であった。玉城朝薫の名作を2本立てにし、満員御礼となった。「護佐丸―」は若手中心、「女物狂」はベテラン中心という好対照な配役で見慣れた演目に新鮮味を与えた。舞台構造は、琉球王国時代に倣い御冠船舞台を用いた。

 「護佐丸―」では、平田智之が大役のあまおへ(あまうゐ)に挑戦。眼光鋭い「七目付」の所作で野心を表現した。もう少し貫禄が増すとよいのではないか。
 地謡は山内昌也、名城一幸、喜納吏一、池間北斗、金城裕幸、崎濱秀貴、國場秀治。あまおへを討つため、鶴松(金城真次)と亀千代(玉城匠)が母(赤嶺正一)と別れる場面の「伊野波節」は、聞き応えがあった。
 前半は伸びのある高音が悲壮感をかき立てる。後半は、二童が母を振り返ってうな垂れる所作と、地謡の「ハイヤマーター」の囃子(はやし)がリンクし、親子のつらさが伝わった。
 あまおへが背中を見せた瞬間、亀千代が刀に手を掛け鶴松が制止するところも見せ場だ。地謡も音で強調しスリリングだった。
 鑑賞した眞境名正憲らは、二童が歌に合わせて登場する際の歩みが速い、と指摘した。橋掛かりがある御冠船舞台は、普段の額縁舞台より中央までの距離が長いため、歌に間に合わせようと歩みが速くなった。「御冠船舞台に合った演出をもっと研究する必要がある」と話した。
 統括・監修は島袋光晴、立方指導は赤嶺、地謡指導は島袋英治。
 「女物狂」は、ベテランの親泊興照が人盗人を演じた。荒々しさとおかしみが同居した難役だ。亀松(島袋由妃)をさらう時はすごみを利かせる。座主(比嘉良雄)と小僧(池間隼人、真境名律弘)の尋問を切り抜けようと四苦八苦する場面は、笑いを誘った。
 親泊久玄は亀松をさらわれた母を演じた。うな垂れて歩む所作、絞り出すような唱えから、狂気に至るほどの悲しみが伝わってきた。座主に助けられた亀松を見て、わが子と気付くまでの無音の間(ま)が観客を引き付ける。正気に戻り、亀松と触れ合うクライマックスを地謡と共に好演した。
 地謡は仲嶺伸吾、照喜名朝國、與那國太介、名嘉ヨシ子、入嵩西諭、岸本隼人、宇座嘉憲。統括・監修は興照、立方指導は真境名、地謡指導は照喜名朝一。(伊佐尚記)

<護佐丸敵討>あまおへ(前列右、平田智之)を酔わせて隙をうかがう鶴松(同中央、金城真次)と亀千代(同左、玉城匠)=3月22日、国立劇場おきなわ
<女物狂>小僧(右、真境名律弘)の尋問を切り抜けようと四苦八苦する人盗人(親泊興照)=3月22日、国立劇場おきなわ