男性が銀行提訴 裁判官が異例の「忠告」裁判休止に


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 「20年以上裁判官をしているが、こんな訴訟は初めて。結論から言うと認められない。悪いことは言わないからおよしになった方がいい」。17日、那覇地裁で開かれた民事訴訟の第1回口頭弁論で、鈴木博裁判官が原告の男性に対して異例の「忠告」をした。

男性は、他人名義の銀行預金証書などの所有権が自分にあることの確認を求めたが、訴訟は休止扱いになった。
 訴状によると男性は、昨年12月に古物商で写真の現像用機材などを購入。数日後、機材の中から20年以上前の銀行の定期預金証書や印鑑などを見つけた。証書の額面は合計で1700万円以上あったという。銀行に対して「購入機材の中にあったので、(預金証書の)所有権は自分にある」と主張したが、応じなかったため提訴した。
 鈴木裁判官は、双方が主張をする前に、男性に対して「例えば総菜屋でコロッケを三つ買い、家に帰って袋を開けた時にダイヤの指輪が入っていても、指輪は返さなくてはいけない。売買の対象になってないのだから」と例を挙げ、購入した店か警察に届け出るべきだと指摘した。男性は、銀行や国税庁などに相談したとして、「拾得物ではなく買ったものなので警察には届けていない」と答えた。
 取り下げを勧める鈴木裁判官に対して男性は「時間をもらって考えたい」と要求。裁判は双方が出頭しながらも主張をしないまま休止という展開になり、1カ月以内に男性が期日の指定をしなければ自動的に取り下げられることになった。
 男性は、「何もしないと預金は銀行のものになってしまうと思って提訴した。今後どうするかは考えたい」と話した。銀行は一般論として「他人名義の証書の所有権が認められても、預金はその人のものにはならない」としている。(沖田有吾)