「福島第1事故は人災」 名嘉さん、40年の技術者経験一冊に


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 伊是名村出身で、原子力発電所の技術者・名嘉幸照(ゆきてる)さん(72)=福島県いわき市=がこのほど、「“福島原発”ある技術者の証言」(光文社)を出版した。

執筆のきっかけについて「私にとって『遺言状』のような気持ちで書いた。福島の復興は遅れているのにもかかわらず、原発は収束したイメージが広がっている。現場の真実を書いて、国民が判断するきっかけとなる情報提供をしたいと思った」と語った。
 名嘉さんは、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)の技術者として1973年に福島第1原発に着任した。黎明(れいめい)期の大小さまざまなトラブルと保全に対応してきた。1980年に東京電力の協力会社「東北エンタープライズ」を設立、現在は会長を務める。
 著書では、かつて起こった報道されていない深刻な事故についても触れ、「3・11の事故は人災だった」と言い切る。「原発事故について今なお『真実』は語られていない」という。
 名嘉さんは「特定秘密保護法が制定され、今後の原発行政がどうなるのかが気になる。本の中で過去に起こったことを真摯(しんし)に反省し、多くの人に考えてもらいたい」と述べた。
 名嘉さんが住んでいた双葉郡富岡町は立ち入り禁止区域となり、いわき市に会社も自宅も移転した。現場では今も名嘉さんの会社の社員も含め多くの作業員が、廃炉の処理に当たっている。
 最終章では「双葉郡アイランド構想」を提案し、未来にも目を向ける。名嘉さんは福島に骨をうずめる覚悟を決めている。著書は1512円(税込み)。
 (知花亜美)

名嘉幸照さんの著書の「“福島原発”ある技術者の証言」
名嘉 幸照さん