国、年度内終了求める 名護市のシュワブ内文化財記録


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防衛局が米軍キャンプ・シュワブ内で文化財の位置を照会した区域にある遺跡など

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設手続きを進める沖縄防衛局が名護市に対して、米軍キャンプ・シュワブ内の開発予定区域にある文化財の記録保存作業について、「全行程を本年度内に終了してほしい」と要望していたことが28日、分かった。

沖縄防衛局は11日、シュワブ内の文化財有無照会文書を市文化課に提出した際に口頭で伝えた。照会区域は5カ所の遺跡にかかっており、記録には文化財保護法に基づく段階的な調査が必要だ。文化課は同局に対して回答していないが、「期間や人員確保の面からも無理だ」と話している。
 同局が照会した区域には、先史時代の思原長佐久(うむいばるながさく)遺物散布地や思原石器出土地、思原遺跡、ヤニバマ遺物散布地、近世~近現代の美謝川(びじゃがわ)集落関連遺跡群がある。思原遺跡以外は記録保存の初期段階となる「分布・確認調査」しか行われていない。同法などに基づく作業工程では分布・確認調査の後、自治体は事業者と事前協議し、予備調査で調査対象や範囲を確定させ、記録保存用の本発掘調査などを行う。4カ所の遺跡の中には範囲が不確定な場所もあり、現段階では調査期間も決まっていない。
 中でも、移設に向けた埋め立て土砂の採取予定地とされる美謝川集落関連遺跡群は、辺野古ダム周辺の広い範囲にまたがっており、琉球王国時代の街道「宿道」を含む陸上交通遺跡群などが確認されている。
 市が2013年にまとめた調査報告では、シュワブ内の遺跡は、基地建設の影響を受けているとし、「適切な保護対策を講じていかなくてはならない」とまとめている。
 同局は要望の理由を「移設を迅速に進めるため」と説明した。しかし、市文化課は「記録作業は一つの遺跡でも複数年かかることもある。事前調整もなく数カ所の遺跡の記録保存調査を本年度内に終えてほしいと言われても無理だ」と述べた。(嘉陽拓也)