小僧、自然な演技に 「執心鐘入」公演


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小僧二(大湾三瑠・左から2人目)をげんこつしようとする小僧一(神谷武史・同3人目)=26日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわの組踊公演「執心鐘入」(玉城朝薫作)が26日、浦添市の同劇場で上演された。宿の女役は、1月の開場10周年祝賀公演と同じ佐辺良和。1月は立方と歌三線を同劇場の組踊研修修了生で固めたが、今回は修了生以外の中堅・ベテランが加わった。

眞境名正憲の指導で、見どころの一つである小僧の演技が、より自然になるよう工夫した。
 佐辺以外の立方は西門悠雅(中城若松)、正憲(座主)、神谷武史(小僧一)、大湾三瑠(小僧二)、玉城匠(小僧三)。
 小僧たちが女の後に付いて歩く場面で、ぶつかりそうになり、小僧一が後ろの小僧二を、小僧二が後ろの小僧三をげんこつしようとする。小僧三も後ろを振り返りげんこつしようとするが、誰もいないため笑いを誘うというのが一般的な型だ。正憲は「誰もいないのに不自然」と考え、小僧三が小僧二にやり返すようなしぐさをする演出に変えた。従来の型も面白いが、正憲の演出も一理ある。
 また、宮城能鳳の指導による1月の「執心鐘入」では、鬼女を成仏させた後、座主と小僧たちは静かに幕内に入った。今回は小僧三が胸をなで下ろし、笑いを誘う一般的な型で演じた。能鳳は「成仏の余韻を残したい。笑いがあると重々しさが断ち切られる」と説明する。どちらの演出も長所があると感じた。
 地謡は西江喜春、花城英樹、玉城和樹、大城智史、入嵩西諭、岸本隼人、比嘉聰。比嘉の緩急をつけた太鼓と、宿の女の心情を表す鋭い「ヤ声(ぎい)」が光った。
 前舞踊で、比嘉一惠は祖母清子が戦後に復活させた古典女踊「苧引(うーびち)」を踊った。糸バショウの繊維を引く作業を題材に、「いとしい人に着物を縫ってあげたい」との思いを表現する美しい手踊りだ。踊られる機会が比較的少ないが、普及・継承してほしい。