国、竹富提訴を断念 八重山教科書、単独採択決定受け


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 【東京】下村博文文部科学相は23日の記者会見で、八重山教科書問題をめぐる国の是正要求に応じないとする竹富町教育委員会への違法確認訴訟を提起しないと明言した。県教育委員会が21日、竹富町教委の単独採択を決定したことで、来年度からは町教委の違法性が解消されることから、訴訟の意義がなくなると判断した。

竹富町教委が分離されれば、来年度から国の無償給付が3年ぶりに復活する。
 下村氏は「訴訟に一定の期間がかかる。違法性が確認されても、年度途中で教科書を変えられるかの問題もあり、あえてしない」と述べ、子どもたちや学校現場への影響などを踏まえ、総合的に判断したとした。
 竹富町教委は2011年8月、八重山採択地区協議会を構成する石垣市、与那国町の両教育委員会が採択した保守色の強い育鵬社の中学公民教科書を使用せず、地方教育行政法に基づき、12年から東京書籍版を使用。文科省は採択地区内で同じ教科書を使うとした教科書無償措置法に反するとし、町教委に対し3月、是正要求した。しかし、町教委が是正要求に応じないため、違法確認訴訟の提起を検討していた。
 下村氏は県教育委員会が竹富町教委を単独採択地区に設定したことについて「無償措置法の趣旨を十分踏まえたものとは言い難く、遺憾だ」と批判しつつも、「法律上の権限を有する県教委の判断で、今回は違法性はない。文科省として受け止めざるを得ない」と述べた。
 文科省は23日午前、県教育庁に対し、電話で下村氏の会見内容を伝えた。