斬新 扇子で「柳」 創作舞踊「蓬莱島」


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「蓬莱島」を踊る坂東玉三郎(中央)ら=25日、浦添市の国立劇場おきなわ

 「聞得大君誕生」の再演と併せて創作舞踊「蓬莱島(ほうらいぬしま)」が初披露された。構成・演出は坂東玉三郎、振り付けは阿嘉修・新垣悟、音楽は花城英樹。「聞得大君」初演の際に、玉三郎から「『柳』を群舞に構成し直す」というアイデアが出たのがきっかけだ。さらにニライカナイ伝説を題材にした舞踊劇が提案され、「宮廷芸能の新たな組み立て方」に挑んだ。

 粗筋は、大蛇(宇座仁一)が大地を荒らし、植物の精(新垣ら)は息絶える。蜂の精(阿嘉、玉城匠)はニライカナイの神(玉三郎)に助けを求め、生き物たちはよみがえる。
 劇的な選曲が飽きさせない。さらに「柳」の群舞の間に、「揚作田節」(松の精の舞)と「伊集早作田節」(伊集の花と蜂の精の舞)を挿入する大胆なアレンジがされた。よく見られる蝶(ちょう)ではなく蜂が登場するのも面白い。蜂の精は扇を動かしてすばしこさを表現するなど、遊び心のある振り付けで引き付けた。大蛇の荒々しい所作は歌舞伎の影響も感じられる。
 鑑賞した玉城流玉扇会の玉城秀子二代目家元は「男役(松の精)が扇子で『柳』を踊るなど、私たちが発想しない斬新な組み方だ。手を変えるわけではなく、古典を崩さずに演出している」と評価した。
 昨年からのコラボレーションによって、玉三郎が組踊や琉舞を完全に体得したわけではなく、歌舞伎と琉球芸能の様式が融合されたわけでもない。それよりも、玉三郎の発想力や舞台のつくり方、視点に沖縄側が刺激された意義が大きいように思う。
 玉三郎は「歌舞伎の様式を持ち込むのではなく、歌舞伎の柔軟な発想が生かされる。その際に大切なのは品格、美しさがないといけない」と語る。今後も沖縄と関わり続けることに意欲的だ。
 各自が今回の経験を一過性のものに終わらせず、琉球芸能にどう生かし、多くの人に魅力を伝えていくかが問われるのではないか。