研究成果で構成「義臣物語」上演 地方組踊参考に


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鮫川の按司(右)の臣下に捕らえられる、国吉の比屋(左)=10日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわの研究公演「村々に伝わる組踊」が10日、浦添市の同劇場であった。組踊「義臣物語」(田里朝直作)を、県立芸術大学非常勤講師の鈴木耕太氏が演出。「尚家本組踊集」から得られた新情報や、地方に伝承されている組踊を参考に上演した。

シンポジウムもあり、琉球芸能研究家の宜保榮治郎氏、国指定重要無形文化財「組踊」保持者の大湾清之氏、鈴木氏が登壇した。
 「義臣物語」は、遊興三昧の高嶺の按司が臣下・国吉の比屋(玉城匠)の助言も聞かず、鮫川の按司(池間隼人)に討たれる。国吉は人形売りに姿を変え、逃げ延びた高嶺の若按司(玉城知世)とおめなり(藤戸瑛子)を捜し出す。国吉は敵討ちのため1人で火攻めを仕掛ける。
 現代の組踊は若衆役も成人男性が演じることが多い。琉球王朝時代は、物語の設定に役者の年齢を合わせることがあり、若衆役や子役の声は成人男性の役より高かったという。今回、鈴木の「リアルな演劇としての組踊を目指す」という思いと女性の出演機会をつくる観点から、若按司、子役を女性が演じるという演出を試みた。それに応えるように、玉城と藤戸の男性に引けを取らない唱え、舞踊が目を引いた。
 また、1982年の伝統組踊保存会による上演では、国吉の比屋は「強盗提灯(ちょうちん)」を持つ。しかし尚家本では強盗提灯を使っていないと思われ、今回は地方の組踊でよく用いられるたいまつを使った。
 シンポジウムで、鈴木氏は「恩納村の組踊では、場面によって背景の幕が変わる」などの特徴を説明した。宜保氏、大湾氏も各村の組踊への思いや魅力、逸話を語った。