沖縄戦の教訓学んで 琉大生「がちゆん」起業


社会
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 「沖縄戦の教訓は、若い世代に伝わっているのだろうか」。疑問を抱いた琉球大学教育学部3年の国仲瞬さん(21)=沖縄市=は5月、平和学習を支援する株式会社「がちゆん」(沖縄市)を立ち上げた。

主に、沖縄を訪れる修学旅行生向けに宿泊先のホテルに出向いて沖縄戦や基地問題についての討論会を企画・運営する。
 すでに大手旅行代理店と契約を交わし、7月に東京の高校1校の受け入れが決まった。国仲さんは「結論ありきではなく、なぜ戦争や平和について学ぶ必要があるかという点から考える教育を展開したい」と意気込む。
 会社名は、「がち(本気)でゆんたく(話す)」の意味。琉大生の友人と2人で設立し、運営には学生もボランティアで参加する。国仲さんは社名と同名のディスカッションサークルを2013年5月に設立。1年間で3校、計370人の修学旅行生向け討論会を行った。
 米軍基地に隣接する普天間高校を卒業した国仲さんだが、高校卒業まで基地や戦争について考えたことはなかった。大学生になり、沖縄戦を語り継ぐ活動に汗を流す先輩の姿に刺激を受けた。そして平和教育の在り方を考えさせられる衝撃的な出来事に出合った。
 「あの崖は戦争を諦めたやつが死んでいった所だろ」。13年夏、糸満市の「平和の礎」で県外の修学旅行生が大声でそう口にするのを聞いた。
 「何のために平和教育をしているんだろう」。国仲さんは当時サークルだったがちゆんで、平和学習事業に取り組むことを決め、会社化した。
 大人が「戦争は駄目」、「命は尊い」と結論を一方的に教えるのではなく、なぜ戦争について学ぶ必要があるのかを考えることに重点を置く。教師も生徒も互いが率直な意見を交わしながら学び合う“平和共育”を意識する。
 国仲さんは、体験者が若者に直接語り継ぐ活動も「体験者にしかできない、そして今しかできない大切なこと」と重要視する。その上で若い世代の役目として「さまざまな意見を言う人がいたら、なぜその人はそう考えるのか、背景も一緒に考えることが自分たちの役目」と話す。今後は平和だけでなく環境、観光、教育など幅広いテーマの事業も展開する考えだ。
 がちゆんは「慰霊の日」の23日、午前10時と午後5時から、糸満市の平和祈念公園で公開討論会を開催する。問い合わせはメールokinawa@gachiyun.co.jp
(仲井間郁江)

県外の修学旅行生向けに開催した平和討論会=2013年10月、恩納村のリザンシーパークホテル谷茶ベイ
修学旅行生向けの平和学習などを展開する企業「がちゆん」代表の琉大3年の国仲瞬さん=12日、西原町の琉球大学前