教育

悲劇繰り返さないで 幼稚園の不発弾事故語る

 「ドーン」。19日午前、那覇市首里石嶺町の石嶺市営住宅の建て替え工事現場で、不発弾処理が行われた。火薬を用いた装置で、艦砲弾の先端に残された信管を飛ばして破壊。処理壕から約100メートル以内の区域で、約490世帯、1200人が一時立ち入り禁止になった。

 現地対策本部で自衛隊、警察、消防の調整役を果たした那覇市の金城竜人市民防災室長(47)は40年前のことを今でも覚えている。実の妹のように接していた当時3歳のいとこの女児が聖マタイ幼稚園そばの不発弾爆発事故で生き埋めになり、一時意識不明の重体に陥っていた。金城室長は「今こうして不発弾処理に関わるのは、何かの巡り合わせを感じる」と話し「毎回安全に実施しているが、無事に終わってほっとした」と安堵(あんど)の表情を見せた。
 1974年3月2日。那覇市小禄の聖マタイ幼稚園近くの爆発事故で幼児を含む4人が死亡し、34人が重軽傷を負った。当時の園長、鬼本照男さん(85)らによると、爆発時はひな祭りの最中で、園児と参観中の父母らは園舎内にいたが、園児の弟や妹が園庭で遊び、金城室長のいとこの女児もブランコに乗っていた。
 鬼本さんは「爆発直後に土砂から小さな手が見え、必死に掘り出した。もしかしたら、この女の子だったかもしれない」と話す。
 女児は近くの外科に搬送後、脳神経外科に転院した。昏睡(こんすい)状態だったが4日朝には意識を取り戻した。金城室長は見舞いに行き、足に包帯を巻いた女児と言葉を交わしたのを覚えている。
 戦後69年となる現在も、県内には約2050トンもの不発弾が残っていると推定されている。県のまとめでは、聖マタイ幼稚園近くの事故後も、爆発事故で3人が死亡し、21人が負傷している。不発弾は日々、県内各地で見つかっている。
 特に那覇市では、ことし6月に3件の住民避難を伴う不発弾処理が行われた。金城室長は「過去10年以上さかのぼっても例のない多さ」だと話す。
 金城室長が懸念しているのは、民間工事での磁気探査が進んでいない現状だ。
 公共事業前には探査が行われ、19日の不発弾も市の事業で見つかった。2009年1月に糸満市小波蔵の工事現場で起きた爆発事故を受け、個人や事業者が住宅などを建てる際には、探査費用を全額補助する新しい支援事業が12年度から始まっている。初年度の利用は県全体でわずか5件。13年度は81件に伸びたが、金城室長は「まだまだ少ない」と指摘する。
 聖マタイ幼稚園で意識不明になった女児は回復し、現在は県内で看護師として働いている。だが、同じブランコで遊んでいた同い年の女の子は即死した。金城室長は「40年前のような悲劇を繰り返さないためにも、不発弾を身近な問題として考え、新しい制度を活用してほしい」と話す。
 磁気探査支援事業は、各市町村の窓口で受け付けている。(安田衛)

◆つぶれた遊具「妹が…」/上原聡さん当時の園児
 聖マタイ幼稚園そばで起きた不発弾爆発事故に巻き込まれ一時意識不明の重体となった女児の兄で、当時、同園に通っていた東京都大田区のトラック運転手、上原聡さん(45)が、19日までに琉球新報の取材に応じ、爆発事故時の状況を詳しく語った。
 爆発時、上原さんは園舎の中でひな祭りのお遊戯会に参加し、母親が見学していた。入園前だった妹は、数人の子どもたちと園庭の砂場脇の4人乗りのゆりかご式ブランコで遊んでいた。
 不発弾が爆発すると、平屋の園舎は建物ごと浮き上がったように揺れ、大勢が集まっていたホールで一斉に悲鳴が上がった。園庭の土砂は掘り起こされ、ジャングルジムがぐにゃりとつぶれているのが分かった。
 母親は「(妹が)外にいる」と大声で叫び、助けに出ようとしたが、あまりに取り乱していたため、周りの大人から制止された。代わりに上原さんが「捜してきて」と母親に言われたが、同じように止められたという。
 すぐに迎えに来た父と2人で付近の病院を回り、必死に妹の搬送先を捜した。一度行った病院を再度訪ねた時に、治療室で全身泥だらけのまま寝かされていた妹を見つけた。
 妹は今は事故に遭った記憶が全くない。両親は事故について話したがらず、妹とも大人になってから事故について話すことはほとんどないという。
 現在、民間工事の新しい探査制度が十分に普及していないことについて、上原さんは「行政の広報がうまくできていないからではないか」と話し「不発弾の上に暮らす怖さをよく考えてほしい。探査が無料でできるなら、見つかったら、運が良かったと思うべきだ」と訴えた。(安田衛)


不発弾の処理方法を説明する那覇市の金城竜人市民防災室長=19日、那覇市首里石嶺町

爆発事故が起きた聖マタイ幼稚園付近=1974年3月(那覇市提供)

不発弾爆発事故時の状況について話す上原聡さん=東京都大田区


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