沖縄戦遺骨、DNA鑑定せず焼骨へ 国基準厳しく


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戦没者遺骨のDNA鑑定状況と県内収容遺骨数

 沖縄戦戦没者の遺骨を一時的に保管する、糸満市摩文仁にある県平和祈念財団「戦没者遺骨収集センター」の遺骨仮安置室が満杯状態になっている。DNA鑑定を求める声を受けて、焼骨が保留されてきたため。ことし4月、県は焼骨の保留措置を解き、DNA鑑定が実施されない遺骨は今後焼骨される予定だ。

戦後から69年たった現在でも多数の遺骨が発見される一方で、厚生労働省の鑑定実施基準が厳しいために、遺族が求めるDNA鑑定はほとんど進んでいない。
 センターは、県内各地で発見された戦没者遺骨の大半を焼骨し、国立戦没者墓苑に納骨している。しかし、遺骨収集ボランティア団体ガマフヤーから焼骨前遺骨の保管を求める県議会への陳情などを受け、2013年度は焼骨しなかった。
 ガマフヤーは遺骨のDNA鑑定を求めており、焼骨するとDNA抽出が困難になる。センターには2012年度、13年度に発見された遺骨を中心に、約400柱の遺骨が安置されている。
 厚生労働省の統計によると、県内の収骨数は2011年度159柱、12年度103柱、13年度は262柱で推移している。また県の統計では、いまだ県内には約3200柱が眠っているとされている。沖縄戦戦没者の遺族からは、DNA鑑定の実施を求める声が多く上がっている。
 一方、厚労省がDNA鑑定を始めた03年度から13年度までの間、沖縄戦戦没者への鑑定実施は50件に過ぎず、このうち遺族が判明したのは県外出身の日本兵4人にとどまった。
 厚労省はDNA鑑定の条件として(1)識別できる遺品があり、部隊名簿などから遺族が推定できる(2)遺族が鑑定を希望し、家族が検体を提供できる(3)遺骨から鑑定に有効なDNAが抽出できる-を挙げている。高温多湿な沖縄の気候から骨の保存状態が悪く、また遺品などが残っていないことが多いとして、DNA鑑定は進んでいない。(大嶺雅俊)