焼骨せず鑑定を 沖縄戦戦没者、県議会決議へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県議会文教厚生委員会(呉屋宏委員長)は10日、DNA抽出前の沖縄戦戦没者の遺骨を未焼骨のまま保管することを県が国に求めるよう要請する決議を全会一致で可決した。15日の最終本会議で可決する見通し。

決議は、遺骨を保管する仮安置室の拡充と県内へのDNA鑑定施設の設置を国に要請することや、遺骨の取り扱いに関する県独自の考え方を明確にし、方針として策定することも求めている。県は4月、保留措置を解除し、焼骨する方針を固めていた。
 焼骨すると身元を特定するために必要なDNA抽出が困難になることから、保管の継続を求める要請が新たに県に提出されたこともあり、県は再び焼骨を保留している。
 県議会は2月定例会で、焼骨前遺骨からDNA抽出をしてデータベース化することなどを国に求める意見書を全会一致で可決した。6月定例会の一般質問でも議員からは県の対応への批判が相次いでいた。
 決議案は「高齢化する戦没遺族の一日も早く遺骨を返してほしいという願いをかなえるためにも、DNA鑑定実施のさらなる加速化が必要不可欠」などと指摘し、県に主体的な関与を求めている。
 10日の文厚委は、手話が自由に使える環境整備をするための「手話言語法(仮称)」制定を求める意見書も全会一致で可決した。このほか県立南部医療センター・こども医療センターで発生した医療事故の遺族および日本赤十字社に対する損害賠償額を決定する議案も可決した。

<用語>県内の遺骨収集とDNA鑑定
 厚生労働省の統計によると、県内の遺骨収骨数は2011年度159柱、12年度103柱、13年度262柱で推移している。また県の統計では、県内にはまだ約3200柱が眠っているとされている。
 いまだに多くの遺骨が発見される一方、遺族が身元判明のため期待するDNA鑑定は実施は進んでいない。鑑定を開始した03年度以降、県内で発見された遺骨の鑑定実施は50件にとどまり、このうち身元が判明したのは4件。厚労省は高温多湿な沖縄の気候から骨の保存状態は悪く、DNA抽出が難しいとしている。
英文へ→Okinawa Prefectural assembly resolves to preserve remains of victims of the Battle of Okinawa