国保赤字、沖縄戦が原因 前期高齢者率低く


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国保財政状況の比較表

 2012年度の県内国民健康保険(国保)の実質的な単年度収支が約98億8932万円の赤字になるなど県内の国保財政が悪化している問題について、69年前の沖縄戦で多数の県民が犠牲になり、全国と比べて65~74歳の前期高齢者の割合が低いことが原因だったことが31日、分かった。

前期高齢者の割合を基に算出される前期高齢者交付金が著しく低いため、国保財政の悪化につながっている。事態を重視した県市長会と市議会議長会、町村議会議長会、県市町村国保連合会など5団体は近く、国に是正措置を求める方針だ。
 県内11市の国保担当課長で構成する県都市国保研究協議会が人口動態などを基に調査し、国保財政の悪化と沖縄戦との関連を突き止めた。協議会によると、前期高齢者の割合は全国32・9%(2012年度)に対し、沖縄は17・5%(同)と約半分になっている。その割合が前期高齢者交付金の算定額にも影響し、単年度収入における同交付金の割合は全国23・4%に対し、沖縄は5・9%にとどまっている。被保険者1人当たりの同交付金額も全国9万6859円に対し、沖縄は2万2032円と約4分の1だ。
 08年度の医療制度改正で前期高齢者財政調整制度が導入されて以降、県内国保の単年度収支は悪化しており、制度改正前の07年度の県内国保単年度収支が47億円の赤字だったのに対し、08年度は80億円、12年度は98億円と赤字額が年々増大している。
 町村議長会は30日に都市国保研究協議会からの要請を受け、国に是正を求めることを決議した。県町村会と市議会議長会、県市町村国保連合会は8月1日に、県市長会は5日にそれぞれ論議し、国に是正を求める方針を決める。(当銘寿夫)

<用語>前期高齢者交付金
 サラリーマンや公務員が加入する保険が拠出した基金から、65~74歳(前期高齢者)の人口比に応じ市町村国保に支払われる交付金。前期高齢者の割合が高いほど、交付金の額が大きくなる。2008年度の医療制度改革で、国保財政支援を主な目的に導入された。