小児集中治療の患者最多 常に満床、手術延期や転院も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県内で唯一、県立南部医療センター・こども医療センター(我那覇仁院長)に設置されているPICU(小児集中治療室)の入室患者が年々増え、2013年度は開設以来最も多い年間340人に上った。小児医療の「最後のとりで」といわれ、心疾患のほか外傷や溺水などで救急搬送される患者も受け入れる。

患者数の増加とともに、現在6床のベッドは常に満床状態で、手術の延期や予定より早く病棟へ移ってもらう事態も生じている。同センターは県病院事業局に増床を要望している。
 「MRIの結果はどうだった」「総合所見は」。8日午前8時半すぎ、PICU専属の小児集中治療科、小児循環器科、小児心臓血管外科の医師、看護師らがベッドを囲む。病状が報告され、治療方針を話し合う。小児集中治療医は3人配置。主治医と連携しながら、病状を継続して診ることができる体制が利点の一つだ。重症患者を診るため、看護体制は一般病棟に比べ手厚い。
 心筋炎を患い他の県立病院から転院してきた女児は一時、命の危険があったが、治療をへて人工心肺から離脱し、人工呼吸器も外すことができるようになった。「声を掛けると反応が出るようになった」。看護師が女児の体を拭いながらほっとした様子で話す。母親の金城玲菜さん(31)=金武町=は「表情が乏しく目がうつろで本当に厳しいと思ったが、数日前から回復してきた。ここがなかったら命も危なかった」と目頭を押さえながら語る。
 患者数は08年度から10年度まで200人台で推移していたが、11年度以降は300人台を超えている。PICUの認知度の高まりとともに、重症患者も増えているが、死亡率は年々改善。患者の重症度を示す予測死亡率は2008年度2・5%で、実際亡くなった割合は3・3%だった。13年度は、重症患者の増加で予測死亡率は6・02%に上がったものの、死亡率は2・9%と改善している。小児心臓血管外科の長田信洋部長は「症例が増えるほど治療水準が上がる。(幅広い診療科の)医師が集まって症例を検討する体制が整っている」とPICUの強みを語る。
 課題もある。PICUは現在6床で、06年の開院以来変わっていない。常に満床状態のため、PICUから院内の救急科に対して、患者の受け入れが難しいと通知した日が、4月から8月までに20日間生じるなど異例の事態が続いている。小児集中治療科の藤原直樹医師は「県内唯一のPICUの機能が果たせなくなりつつある」と話す。我那覇院長は「重症だが転院をお願いした子どももいた。重症の子どもたちを可能な限り救いたい」と増床の必要性を語った。

<用語>PICU(小児集中治療室)
 新生児を除く0歳児から中学生ぐらいまでの重症の子どもを治療する専用病室。小さな体に合う人工呼吸器やモニター機器、医療器具などを備えている。子どもは大人より病状が急変しやすく、こうした施設で専門医が処置することで生存率が高まると、欧米では1970年代から整備が進められてきた。国内では昨年12月現在で医療施設27カ所に計178床ある。欧米に比べ人口当たりの病床数は少ない。

小児の重症患者を受け入れ、幅広い職種の医療スタッフが協力して治療に当たる県内で唯一のPICU(小児集中治療室)=8日、南風原町の県立南部医療センター・こども医療センター
PICUへの入室患者数