国保改定、浦添市議会結論先送り 議論、市民開示されず


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国保料の増額改定案が対立案件になりながらも議論は深まらなかった浦添市議会9月定例会本会議

議員の賛否明確化回避 「改革に逆行」と識者

 浦添市議会9月定例会は焦点となっていた国民健康保険料を総収入額で約4億円(18・8%)引き上げる条例改定案の可否採決を持ち越し、次期定例会までの「継続審議」として閉会した。赤字体質の国保会計をどう維持するかという各自治体が抱える課題の議論や、市民負担の行方に地域の注目度は高かった。しかし、委員会審議は非公開とされ、多くの傍聴者が詰め掛けた最終本会議でも混乱するなど、市民の関心に応える討議や説明は示されなかった。

後味悪い幕切れ
 9月30日の最終本会議。継続審議とする案件を確認して定例会を閉じようとした際に、共産会派は国保料値上げに反対する立場から「採決を取って議員の賛否を明らかにすべきだ」と委員会差し戻しを主張した。
 この異議申し出に対し「委員会の決定を覆せるのか」など抗議が飛び交い、議場は紛糾した。議事を整理するための休憩を求める声も相次いだが、又吉正信議長は休憩を挟まず議事を続け、議長への批判も混じる怒号の中で形式的に手続きだけが進んだ。結局、議案を採決するための動議は賛成少数で否決され閉会となったが、議事の流れを把握できていない議員もおり、幕引きの強引さは否めなかった。
 この日の傍聴席には市内の自治会長たちが駆け付け、いつにない緊張感が議員の言動を過敏にさせていた。市自治会長会の比嘉勝昭会長(広栄自治会)は「国保料の負担が増えると自治会費を払えなくなる世帯が出かねない」と懸念を語る。値上げ決定は持ち越されたものの、「傍聴席では何が起きたか分からず、後味が悪い」とこぼした。

傍聴を不許可
 議案を所管する福祉委員会では9月22日に審議が行われていた。本会議と違って委員会傍聴は委員長の許可制で、琉球新報は傍聴希望を届け出たが、「複数の委員から反対意見があった」(銘苅良二委員長)と許可されなかった。非公開となった委員会の審議は夜間に及んだが、会期中に結論を出さず、引き続きの審議とすることを多数決で決めた。
 継続を支持する市議は「関係団体への説明など時間を設けることで拙速な結論を避ける」と説き、低所得者対策や増額幅の修正など、行政側に対応が投げ返されたとの認識も広がる。一方で、委員会審議の非公開や議案の賛否を先送りしたことには、市民負担を含む神経質なテーマで、議員個々の態度を明確にすることを回避した側面もある。
 照屋寛之沖国大教授(行政学)は「実質審議は委員会で行われており、議論が中身を知ることができないのは議会改革の流れに逆行する。普段は市民の傍聴が少ないと言いながら、いざ関心の高い問題で議論を開示しないでは、市民と議会の間に溝が生まれる」と指摘した。(与那嶺松一郎)