「大ヒット盤」増位山太志郎『冬子のブルース』


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甘い歌声に引かれる歌手活動復帰3作目

 2012年の松居直美とのデュエット『秘そやかに華やかに』のロングヒット以来、歌手活動を本格化した元大相撲親方の復帰後ソロ3作目。『そんな女のひとりごと』などがヒットした1970年代は女性コーラスが強すぎて気づかなかったが、まさに帯にある“魅惑の甘い歌声”に引かれる。

 表題曲は、酒場で出会った女性を探しさすらう歌詞も、むせび泣くようなサックスも、実に典型的な昭和歌謡ブルース。間奏の口笛も哀愁漂うが、何より色気と寂しさを併せ持つ増位山の歌声が胸に染みる。愛情を感じさせるのに決して未練がましくないのだ。
 カップリング曲『この指と~まれ!』はコミカルな題名とは裏腹に、故郷から都会に来た寂しい独り者の日常を綴ったフォーク演歌。優しい歌声ゆえ、赤提灯のそばで聞いたら号泣してしまいそうだ。
 プロフィルに、今年が66歳とあるが現役感ある作品にいっそう驚いた。本作から、感情を豊かにすればアンチエイジングにつながると思えるはず。
 (テイチク・1143円+税)=つのはず誠
(共同通信)
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つのはず誠のプロフィル
 つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、T2U音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションCDの企画・選曲などを手がける。

冬子のブルース
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