台風19号 暴風雨 連休を直撃


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 沖縄本島地方に32時間居座った台風19号は、本島北部を中心に記録的大雨を降らせ、建物の全半壊など各地で土砂災害を引き起こした。本島南部では11日夜の高潮と暴風雨が重なって与那原町の海岸沿いの住宅の窓を突き破って海水が押し寄せた。

「周囲が海になっていた」と語る住民は避難所で眠れぬ夜を過ごした。公共交通機関が止まり、大型食料品店も丸一日以上閉まるなど、住民生活への影響も出た。週末のたびに沖縄を襲う“週末台風”は各地で自然の猛威を振るい、県民や観光客が楽しみにしていた3連休を台無しにした。

<北部>土砂崩れで家半壊 桟橋、漁船損壊も
 【北部】観測史上最大の雨量を観測した国頭村をはじめ、北部では12日も断続的に雨が降り続いた。複数箇所で土砂崩れが確認された。沿岸部では特に激しい風が吹き荒れ、高波が海岸を大きく越えた。海岸部の一部崩壊や満潮も重なった船だまりで桟橋が損壊、打ち上げられた流木や砂が車道を覆い、通行に支障を来す被害もあった。大宜味村では大兼久公民館などに避難する3世帯4人は、通行止めなどで自宅に帰れず12日も一夜を明かすという。
 本部町谷茶では11日午後10時半ごろ発生した土砂崩れで、県道219号沿いの仲宗根鉄工所の加工場が押しつぶされた。12日朝、現場を訪れた鉄工所代表の仲宗根吉男さん(63)によると、工場隣の自宅で地響きを聞き外に出ると、工場裏の崖が崩れ工場とともに、2トントラックやプレス機が押しつぶされていた。仲宗根さんは「仕事ができなくなったが、けが人がなくて良かった」と話した。
 国頭村伊地では集落近くの山が崩れ、民家が半壊した。住民の女性は12日午前0時ごろ、集落内の息子宅に避難しけがはなかった。
 国頭村安波の安波船だまりでは浮桟橋が支柱から外れて壊れ、漁船2隻が損壊、漁具が陸側に押し流された。安田漁港でも漁船1隻が損壊した。漁協職員の斎藤弘幸さん(34)は「桟橋が修復するまで漁には出られないかもしれない」と声を落とした。
 東村立東小中学校では、校門や体育館横の小屋付近でのり面が崩れて土砂が流出、体育館の窓ガラスも1枚割れた。
 名護市の東側では満潮時だった午前9時半ごろ高波が押し寄せた。市汀間の緑風学園前の海岸部は一部がえぐり取られた。市辺野古沖では、新基地建設に向けたボーリング調査のため設置された浮具が押し流されている部分があった。
 東村では有銘バス停付近の海岸線沿いで、流木や折れた木々などが100メートルほどにわたり周辺を埋め尽くした。
 午後9時15分ごろ、名護市安和の国道449号が約100メートルにわたり冠水しているのを通行人が発見し、名護署に通報した。同署は高潮による冠水とみて、通行車両を一時迂回(うかい)させた。

<中部>50時間以上停電が続く うるま市
 【中部】本島中部では12日も強風によるけが人や土砂崩れ、街路樹の倒木などの被害が確認された。同日午後9時現在1100戸が停電している。中には50時間以上停電が続いている地域もあり、生活に大きな支障が出ている。
 うるま市石川楚南では10日午後7時ごろに約30世帯が停電し、12日午後9時26分に復旧した。沖縄電力によると、うるま市内では他市町村に比べ、電線に強風による樹木などの飛来物の接触箇所が多く確認されており、対応が間に合っていないという。
 北谷町吉原では白比川近くの急斜面の木や土砂が崩れ落ちたほか、うるま市与那城池味でも台風の影響により樹木や土砂が車道に崩れ落ち、住民の生活道をふさいだ。宜野湾市の下水道工事現場では、大雨で路盤材が流されているのが確認された。

<南部>窓破り海水侵入 高潮、護岸越える
 【南部】集落内の道路まで海水が流れ込み浸水被害が出た与那原町板良敷。仲村章さん(56)の住宅では11日午後7時半ごろ、高波が海側に面したガラス窓を突き破り海水が室内に流れ込んだ。暴風域に入って猛烈な風が吹き荒れ、午後9時の満潮を前に海水が護岸を越えて窓の高さまで迫ってきていた。仲村さんは「避難勧告を受けて、どうしようかと家族で話し合っているところに窓の割れる大きな音がして、海水が一気に流れ込んできた」と語った。
 気象庁が11日午後4時に発表した気象情報では、大潮の時期と台風の接近が重なることから、高潮に「最大級の警戒」をするよう呼び掛けていた。
 現場は中城湾に面した、与那原東小の南側の住宅密集地。護岸と住宅地の間には2車線の道路が通り、海から住宅まで約10メートルほどの距離がある。だが、護岸を越えた高潮で道路は水浸しになり、波が住宅まで打ち付けていたという。
 仲村さんは「引っ越してから4年で床下浸水は1度経験したが、今回は強烈だった。割れた窓から海水が流れ込んできた時は怖くて、何も持たずに家を飛び出した」と振り返る。町が避難所として開設した社会福祉センターに夫婦と娘2人で避難し、一夜を明かした。翌朝に自宅に戻ると1階部分は泥まみれで、テレビや冷蔵庫など家電は海水に漬かって使えなくなっていた。
 11日夜の満潮時には、集落の奥に入った道路にまで海水が押し寄せていた。住民らは「周囲が海になっていた。家まで入ってきたら2階に上がろうと考えながら見守っていた。ここまで波が寄せてくるとは」と語り、水が引いた後の集落に散乱した海草や泥の後片付けに追われた。
 南城市玉城奥武島では、嶺井雅也さん(60)の自宅を、隣接する商店の倉庫から突風で飛ばされたとみられるトタン屋根が直撃し、車の窓ガラスが割れ、瓦屋根が壊れるなどした。

崩れた土砂で半壊した住宅=12日午前8時50分ごろ、国頭村伊地
満潮時の高波がガラス窓を破って流れ込んできた仲村さん宅=12日午前11時半ごろ、与那原町板良敷