演出に趣向 会場一体 「アネマ」デビューコンサート


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観客とともに楽しむ舞台を展開したアネマ=6日、那覇市のパレット市民劇場

 県内で活躍する声楽家で構成する団体「アネマ」のデビューコンサートが6日、那覇市のパレット市民劇場であった。出演者は圧倒的な歌声で観客を魅了するだけでなく、観客とともに舞台で歌い踊るといった、通常のオペラとは異なる趣向を凝らしたコンサートを展開した。

 出演は宮城美幸、善國亜由子、渡邊朋子、佐久川真紀、久高将玄、大城治、前田進一郎、金城真希。ピアノは大橋明枝。ヨハン・シュトラウス2世「美しく青きドナウ」で幕を開けた。日本の四季をテーマにした童謡では8人の輪唱などで荘厳さも加わる。
 M.パンツェーリ・ニーサ「夢みる想い」では宮城、善國の声が神聖さを感じさせた。続くF.レハール「喜歌劇『メリー・ウィドー』より 女・女・女のマーチ」は女心の難しさを表現した1曲。久高、大城、前田の男性3人が舞台に登場し、情感たっぷりに歌う。曲の途中では観客も舞台に呼び込み、ともに歌い、踊るなどこれまでのオペラ歌手のコンサートでは見たことがない演出が会場を沸かせる。
 L.デンツァー「フニクリ・フニクラ」は観客の手拍子に合わせ、久高がユーモアたっぷりにカチャーシーを舞うと笑い声も絶えない。M.ブランテル「カチューシャ」は先に歌詞を読み、続いて観客と歌うなどオペラを会場と一体で楽しむ意欲に満ちた舞台が進んでいく。
 A.バルディ「パセラ」では前田、久高が哀愁を漂わせて歌い上げる。「ともに音楽を楽しむひとときを大切に」との思いで結成したアネマ。最後の曲は「これからも歌の道を進み続ける思いを込めて」(渡邊)と強い決意を歌声に乗せた「マイ・ウェイ」。大城の低音に続き、久高、前田の男声に、女声が合わさり、盛大に締めくくる。
 アンコールでは「タイムトゥセイグッドバイ」を歌う。観客席に下りた出演者が花を持ち、一輪一輪、観客へ手渡していく。楽しませて、歌への感謝を忘れないことをメッセージに込めたコンサート。いつまでも続く観客からの拍手や指笛は期待の高さをうかがわせた。
 「5年で県民の0.1%のオペラファンをつくりたい」(前田)と結成されたアネマ。その歴史に大きな1ページを刻んだ。(大城徹郎)