選挙「壁」なくして 障がい者、改善訴え 実例報告会


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投票行動などが制限された体験を報告した参加者ら=3日、那覇市の県総合福祉センター

 投票所におけるバリアフリーの実態を共有し、解決策の方向性を探ろうと、県脊髄損傷者協会は3日、実例報告会「一緒に考えてみませんか? 選挙とバリアフリー」を那覇市の県総合福祉センターで開催した。

目と耳、または両方に障がいのある人や重度の心身障がいのある人、その家族など約50人が参加し、選挙をめぐる体験を振り返った。参加者は「候補者の公約など選挙情報に格差がある」「投票所職員と意思疎通が図れない」「介助者や家族が代理投票できる仕組みづくりを」などと事例を挙げ、意見を交わした。
 報告者の1人で聴覚障がいの比嘉豪さん(62)=名護市=は、候補者の政見放送が国政と知事選挙のみであることを疑問視。県議や市区町村の首長・議員選挙でも候補者情報を得るために字幕付き政見放送を広げてほしいと要望した。
 また公職選挙法が電子メールなどインターネットを利用した選挙運動を候補者と政党に制限していることに言及。「文字を扱うことしかできない聴覚障がい者は選挙運動ができないことになる。見えない差別で問題だ」と指摘した。
 四肢と発語に障がいがある上里直子さん(53)=那覇市=は一般席から発言した。代理投票で対応した投票所職員が上里さんの声を聞き取れず、大声で何度も聞き返すことがあるという。投票の秘密が漏れることに不安を示した上で、ほかの参加者と同じく「介助のヘルパーを入れてほしい」と訴えた。
 知事選に向けて同協会が実施した県内全投票所の調査で、バリアフリーが進んでいない実態も報告された。同協会は、近く県選挙管理委員会を訪れ、報告会で寄せられた声と調査結果を伝え、改善策の実施などを要請する。