県内初、米資格CLS取得 佐久川さん「病の子 心支える」


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子どもと遊ぶ佐久川夏実さん(右)=南風原町の県立南部医療センター・こども医療センター

 病院に入院しているなど医療環境にある子どもや家族に対して、子どもの心に寄り添って心理社会的支援をする専門職「チャイルドライフスペシャリスト」(CLS)の認定試験に県内から初めて、佐久川夏実さん(29)=浦添市=が合格した。

米国ではほとんどのこども病院、小児科クリニックに配置されているが、現在、国内で働くCLSは32人。佐久川さんは今月から県立南部医療センター・こども医療センターで働いている。「沖縄の小児医療に貢献したい」と県内の第1号として道を開いていく決意だ。
 CLSは子どもが分かりやすいように処置の説明をしたり、入院などに対する不安や恐怖という子どもの気持ちを受け止め、その子の力が発揮できるように支援したり、遊びを通して感情を表出させたりする。子どものストレス、トラウマ(心的外傷)体験が軽減されることで、スムーズな処置につながるという。病気の子どもだけでなく、そのきょうだいの支援も行う。
 CLSは日本の資格ではなく、米国に本部を置くチャイルドライフ学会の認定資格。資格取得には、米国の大学や大学院で心理学、教育学、家族学など医療現場での子どもと家族への心理社会的支援に関することを学び、一定期間病院などで実習を積んだ上で試験を受ける。
 佐久川さんがCLSを志したのは、米国のコミュニティーカレッジを卒業し、米国内への大学への編入が決まったころ。CLSとして働く日本人の話を聞き、「入院は大人でも怖い。子どもならなおさら。日本の医療は体の治療優先で、子どもへの心理的サポートは米国に比べるとまだまだ」と強く思った。
 大学で児童発達学を専攻し、大学院でチャイルドライフ学を学んだ。その後、インターンとして米国のこども病院、がんセンターで勤務し、経験を積んだ。言葉の壁は厚く、医者に伝えたいことが伝わらず悔しい思いをした。それでも、長期入院していた子が元気に退院する姿を見たり、患者が心を開いてくれたりすると「やっていてよかった。これを仕事にしたい」と思いを強くした。
 国内では認知度が低く、これからの職業だ。「まずはチャイルドライフスペシャリストの活動を知ってもらうことから。患者や家族のために一生懸命働きたい」と意気込みを語った。
(玉城江梨子)