組踊立方の人間国宝・宮城能鳳(宮城本流鳳乃会家元)の第9回独演会「至芸の美」(同実行委員会主催、琉球新報社共催)が3日、浦添市の国立劇場おきなわで開催された。60年余の芸道の集大成として挑んだ13年ぶりの独演会。
琉球の女性の心を表現する女形として唯一無二の至芸を見せた。昼の部を取材した。
古典女踊「女こてい節」で幕を開けた。めでたい歌詞にふさわしく、清らかで神々しい雰囲気を醸し出す。無駄な力の抜けた所作は柔らかで芯が強い。
宮城能造師匠が好んで踊ったという古典女踊「伊野波節」、雑踊「むんじゅる」、古典二才踊「高平良万歳」も踊った。「むんじゅる」は能鳳らしく清楚(せいそ)で品がある。「高平良万歳」は軽妙な味があったが、力強さと切れも欲しかった。
組踊「執心鐘入」では代名詞といえる宿の女を演じた。体の芯から絞り出される唱えは奥深い。弟子の嘉手苅林一、新垣悟、芸大の教え子の石川直也、嘉数道彦、阿嘉修が共演した。
地謡は人間国宝の城間徳太郎ら。鬼女に変わった後の立ち回りも太鼓の比嘉聰、笛の大湾清之といった名人の力を得て演じ切った。面の向こうから伝わる芸への情熱が女の情念と重なって見えた。
県立芸大、国立劇場おきなわ組踊研修で指導した多くの若手実演家が共演し、能鳳の技と心が受け継がれていく期待を抱かせた。夜の部は西江喜春らと組踊「女物狂」などを演じた。
(伊佐尚記)
※注:城間徳太郎の「徳」は「心」の上に「一」
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