大橋トリオ『ohashiTrio HALL TOUR 2014.05.09 at NHK HALL』
パステルカラーのような淡い色合いの穏やかさ
トリオと名乗っているが実は男性ひとりというソロユニットの大橋トリオが、全国を巡るホール・ツアーの中で、今年5月にNHKホールで行ったライブを収録している。父親の影響で幼い頃から様々な楽器に触れ、映画音楽の作曲家を目指して音楽大学でジャズピアノを専攻したという、ピアノからギター、ベース、ドラム、マンドリンなどを弾きこなすマルチ・プレーヤーだ。パステルカラーのような淡い色合いを想像させる、穏やかな曲を淡々と披露する。
ヒット曲の『マチルダ』『世界でいちばん幸せ者になれ』などを含めたほとんどの楽曲が、その場の空気を乱さず、ひっそりと流れているBGMのように心地よいメロディーとサウンド。もちろん、ただ聞き流されてしまわないような、何かキラリと光るものをそこに宿している。少し高めの歌声が魅力的な大橋本人は細身で、曲のイメージと同じように穏やかそう。アンコールでは一転して、ジャズのアドリブのような演奏と歌を披露するところも見どころだ。
事務所が同じ浜崎あゆみのように、体を張って生命力にあふれたライブ・パフォーマンスを見せる女性の歌い手とは対照的に、クールかつ控えめにナイーブな内面を表現する大橋トリオのような男性の歌い手の存在に、日本の現代社会における男女の生き方を象徴するものがある気がした。
(エイベックス・4500円+税)=小西樹里
(共同通信)
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小西樹里のプロフィル
こにし・じゅり 1977年生まれ。米東海岸で高校・大学時代を過ごす。雑誌編集を経て、2006年よりフリー。音楽、本、映画、演劇、写真、ラジオなど文化系を守備範囲とする一方、国際政治論/動静ウオッチャーでもある。
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