ホテル客室単価 上昇の兆し 一部、08年以前回復も


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ホテル客室単価と宿泊収入の推移

 県内ホテルの客室単価に一部で上昇の兆しが出始めている。リゾートホテルなどに限られ全体的な広がりはまだだが、客室単価が前年より1割以上増えて2008年のリーマンショック前の水準に戻りつつあるホテルも出ている。

入域観光客数が好調に推移し安売りを避ける状況が出てきたほか、客室改装などが単価上昇に寄与している。安定的な単価上昇ではないとの指摘もある。専門家は、客室単価引き上げは各ホテルがどう付加価値を付けていけるかだと指摘している。
 おきぎん経済研究所による県内29ホテルへの調査によると、ことし5月以降ホテルの客室単価は右肩上がりで推移し、5カ月連続で前年を上回った。宿泊収入も13年12月から10カ月連続で増加した。客室単価の上昇について担当者は「需要が好調に推移している影響で上がっている。増税分で上昇しているものではないとみられる」と分析した。
 県内で6ホテルを有するかりゆし(那覇市)はことし4~9月の客室単価が11%増で、10月以降も前年を上回る見込みだ。當山智士社長は「客室を改装したほか、旅行会社と一緒に取り組んで単価を見直した結果だ」と説明した。「東日本大震災の影響で単価を下げたが、ようやく元に戻ってきた。さらにリーマンショック前の単価に戻りつつある」と話した。
 ホテルJALシティ(那覇市)も、円安の影響で高単価の富裕層を含めた海外客が増え、ことしの1人当たりの宿泊単価は前年より千円増。11月から一部の客室を改装し、高価格に再設定する取り組みも始めた。
 一方、県ホテル旅館生活衛生同業組合の宮里一郎理事長は「客室単価増はリゾートホテルなど一部のホテルに限られ、総体的に上がっていない」と述べた。同組合専務理事で那覇セントラルホテル(那覇市)社長の中村聡氏も「ホテルの稼働率は増えているが、単価は上がっていない。一部のホテルの単価が上がったのは円安などの外部要因が影響し、安定的に上昇しているとはいえない」と指摘した。
 琉球大学の上地恵龍客員教授は「1室でも多く売ることが沖縄ホテル業界の慣習だ。空いている客室を埋めることを優先し、単価は二の次にする」と現状を説明した。客室単価引き上げには「ただ単価を上げるだけでなく、品質向上など付加価値をいかに付けて売るかが重要だ」と指摘した。
(呉俐君)