「大ヒット盤」中田裕二『BACK TO MELLOW』


社会
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表現力を増したオリジナル・アルバム

 熊本県出身の男性の1年ぶりとなるオリジナル4th。半年前にカバーアルバムを発表したことで、より歌い手としての表現力が増している。

 全11曲の作詞・作曲を手がけるが、これまで以上に1980年代の退廃的なニューミュージック~歌謡曲風に聞こえる。それは、覚えやすい明快な譜割りだとか、安易に横文字を使わない歌詞だとか、表面的な要素だけではない。大半の曲が、どこか湿り気を帯びているのだ。
 例えば、ミディアム調の『誘惑』では、女言葉で気だるく歌うことで、“終わりが見えてしまう恋”を想起させる。「無抵抗を装いながら/梯子を蹴落とした」という隠喩も絶妙だ。『髪を指で巻く女』にて誘惑される男が「ほらなんか/ほらなんか/欲望が集まってきた」と高ぶる様子も、まるで映画を見ているかのようだ。
 中田は81年生まれだが、安全地帯や沢田研二、中森明菜が好きな中高年にもオススメ。本作を聞けば、夢の中だけでも禁断の世界に浸れるはず。
 (テイチク・通常盤2800円+税)=つのはず誠
(共同通信)
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つのはず誠のプロフィル
 つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、T2U音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションCDの企画・選曲などを手がける。

BACK TO MELLOW(通常盤)
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