音楽に集中したライブに好感
朝ドラ『マッサン』の主題歌『麦の唄』で朝から力強い歌声を響かせている、中島みゆき。2013年1月に東京国際フォーラムで行われたライブが映像化された。デビューが1975年というベテランだが、60代の今も若々しく、その独特の歌声も変わらない。
『空と君とのあいだに』『地上の星』『ヘッドライト・テールライト』といったテレビ番組やドラマで使用され、耳になじみのある曲のみならず、『化粧』(1978年)、『縁』(1983年)、『風の笛』(2012年)など、どの曲も人間の心理をつくようなシンプルだが深みのある言葉が並び、普遍性がある。とはいえ一曲一曲が長過ぎないので重くないし、まして歌っている中島が不敵なほほ笑みを浮かべているので、深刻な雰囲気にさせないところがいいのかも知れない。
華やかな衣装の着替えは2度あり、ライブらしいと言えばそうなのだが、その曲と歌声に圧倒され、よくも悪くも演出はさほど気にならない。ラジオのパーソナリティーで知られるあっけらかんとした語り口を封印して、音楽に集中したライブに好感が持てる。歌詞の字幕付きなのもうれしい。
(ヤマハミュージックコミュニケーションズ・7000円+税)=小西樹里
(共同通信)
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小西樹里のプロフィル
こにし・じゅり 1977年生まれ。米東海岸で高校・大学時代を過ごす。雑誌編集を経て、2006年よりフリー。音楽、本、映画、演劇、写真、ラジオなど文化系を守備範囲とする一方、国際政治論/動静ウオッチャーでもある。
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