珊瑚舎スコーレ、生徒の証言出版へ 開設10周年を記念


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遠藤知子さん

 那覇市のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」(星野人史代表)の夜間中学校は、これまで通った生徒たちの戦中、戦後体験、学ぶことへの思いを一冊の本にまとめる計画を進めている。2004年に開設した夜間中学校に通うのはほとんどが戦後の混乱と貧困で義務教育を受けられず、戦後60年以上たって学ぶ人たち。証言からは沖縄戦が長い間県民生活に影響を与えたことがうかがえる。

 現在、出版資金をインターネット上で募っている。
 同校は開設時から生徒たちの体験を聞き書きし、学校通信に掲載してきた。ことしが開設10年の節目であることから、これらを一冊の本にまとめることにした。
 本のタイトルは「まちかんてぃ!」(待ち遠しかった)。10年前、入学を祝う会で1期生が言った「いつか自分が通える学校ができると思い、60年待ったよ。先生、待ちかんてぃしていたよ」の言葉から取った。
 これまで夜間中学で学んだ生徒のうち、約80人が義務教育未修了者。両親を沖縄戦で失った女性は「10年近く7~8人の育ての親というような人たちに引き回された。今思えば、小さいながらも労働力としてあちこちをたらい回しにされた。無学ということは暗闇、真っ暗」と戦争で犠牲になった自分の人生を振り返り、「字をゆっくりでもいいからきれいに書くのがうれしい。どの科目が好きか嫌いかなんてない」と学べる喜びを語っている。
 聞き書きを続けてきた同校事務局の遠藤知子さん(63)は「義務教育を終えていないということは、(支給金額が多い)厚生年金をもらえる職業には就けなかったということ。そのため、年金が少なく、今でも経済的に苦しい立場の人もいる。沖縄戦が長い間県民生活に影響を及ぼしていることや、子どもの目から見た戦争の実態を知ることができると思う」と本の意義を語る。
 出版資金はインターネットを通じて不特定多数の個人から出資を募る「クラウドファンディング」で集めている。来年2月11日までに172万5千円を集めることが目標。サイトは珊瑚舎スコーレのホームページからリンク可能。問い合わせは珊瑚舎スコーレ(電話)098(836)9011。
(玉城江梨子)