新たな世界観で魅了 国立劇場企画「創作舞踊」


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 国立劇場おきなわの企画公演「創作舞踊」が20日、浦添市の同劇場で開かれた。第5回国立劇場おきなわ創作舞踊大賞の自由作品部門大賞に選ばれた比嘉いずみの「遊行流れ」など受賞3作品に加え、定評のある招待作品が披露された。

 「遊行流れ」は遊行芸を行っていたチョンダラー(京太郎)をモチーフにした。軽快な太鼓と笛の音色を中心に、ダイナミックな舞と指先までこだわった細かな動きが観客の目を引き付けた。1人での踊りながらも舞台を目いっぱい動き回り、遊行芸人が村々を巡る様子も表現するなど、見る人を飽きさせない。民俗芸能と琉球舞踊を融合させた新たな世界観を演出した。
 奨励賞の「志情の綾糸」(玉城靜江作舞)は里之子(東江裕吉)と踊ることを夢見る農村の娘(玉城)の純粋な恋心を表した。娘が幻想の中で里之子と踊る場面では照明も暗くなり、幽玄さが際立った。夢から覚めた娘の悲しげな心情との対比も印象を残した。
 佳作の「十五夜」(真境名あき作舞)は十五夜の月を眺める情景を切り取った。終始、にこやかに楽しげに舞う様子が観衆を魅了した。
 音曲と歌詞が残る御冠船踊を新たな振り付けで復活させる課題曲部門は応募がなかったため、第3回大賞受賞者の玉城千枝に創作を委嘱し、「出砂」が披露された。曲は「仲間節」「出砂節」「立雲節」。恋心を表現しながら、衣装や笠(かさ)にも一工夫を加えた。古典女踊の所作に新たな風を吹き込み、目を引いた。同じように御冠船踊の復活を試みた「菊の錦」(平良恵子作舞)、「團扇踊り」(島袋光晴作舞)も披露された。
 第1回創作舞踊大賞で奨励賞を受賞した「新南島風土記・ニライの島」(高江洲義寛作・作曲・構成、新崎恵子脚色・振り付け・演出)も招待された。五つの場面で構成される。神人の祈り、農作業、恋、豊作など島の生活風景を時ににぎやかな踊りで表現した。その他の招待作品は「初實」(安座間澄子作舞)、「今帰仁道行」(谷田嘉子・金城美枝子作舞)。(大城徹郎)

チョンダラー(京太郎)をモチーフにした「遊行流れ」を踊る比嘉いずみ=20日、国立劇場おきなわ
十五夜の月を眺める楽しさを表現した「十五夜」を舞う真境名あき
娘の恋心を表す「志情の綾糸」を踊る玉城靜江(左)と弟子の東江裕吉