「隠れた名盤」新沼謙治『謙治(ぼく)の詩(うた)』


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フォーク系が中心の自作曲集
 2013年発売の『ふるさとは今もかわらず』シンフォニックVer.が、36年ぶりのTOP30入りとなった新沼謙治の、同作を含む自作曲集。もともと、全10曲はシングルのカップリングやアルバム曲だが、今回は全曲に歌い直しやリミックスが施され、派手ではないが丁寧な仕事ぶり。つまり彼そのものだ。

 シングルは演歌や叙情歌謡が多いが、自作曲ではフォーク系が中心で、さらにコミカルな音頭や料理が題材のロックも加わる。これも、“売れる音楽”よりも“表現したい音楽”を優先した結果だろう。特に印象的なのは、サビで高音がグングン伸びるスローバラードの『ラスト・シーン』。還暦前とは思えぬ純朴な美声ゆえ、別れ歌がまるで青春賛歌に聞こえる。杉並児童合唱団が半数の楽曲で参加し、新沼との調和も良く、青空を整列しながら飛ぶ渡り鳥が心に映る。
 ジャケットデザインは横尾忠則で、各楽曲の手作り感に相応しい。仕事を少しだけ休んで本作を聞けば、本来のなりたい自分が見えてくるはず。
 (日本コロムビア・2500円+税)=つのはず誠
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つのはず誠のプロフィル
 つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、T2U音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションCDの企画・選曲などを手がける。
(共同通信)

謙治(ぼく)の詩(うた)
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