ガジュマルの照喜名商店、9日閉店 地域と歩んだ50年に幕


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【南風原】ガジュマルの大木に囲まれ、地域の人々から親しまれた南風原町大名の照喜名商店が9日、町道の拡張工事に伴い約50年間の営業に幕を下ろす。地域の人々の憩いの場として利用された商店は、時代を見詰め、地域を見守ってきた店の閉店に、町民から名残惜しむ声が上がった。

 店主の照喜名ヨシ子さん(87)は「休む暇もなく繁盛していたころが懐かしい。よく買い物に来たのは地域の常連客や大学生だった」と振り返る。
 商店は、スポーツワールド「サザンヒル」から与那原方面に抜ける坂道の途中にある。「ヒージャーガー」と呼ばれるこの坂道は宿道(しゅくみち)の一つ。かつて首里王府と各地の間切(現在の市町村)を結んでいた道で、首里からの情報は宿道を通じて各地に伝えられた。現在も交通量が多く、車が慌ただしく行き交う。
 ひときわ目を引くのが樹齢100年(推定)以上のガジュマルだ。木陰は心地良い風が吹き、車がなかった時代は急な坂道を行き交う人々の休憩所となった。
 1965年ごろ、ヨシ子さんは夫の名清(めいせい)さんと一緒に自家製豆腐の販売を始め、徐々に食料品や日用雑貨を取り扱うようになった。正月や旧盆には地域の常連客から注文を受け、正月料理やお歳暮、お中元を那覇の市場から卸していた時期もあった。しかし、時代の変遷でスーパーやコンビニが増えるにつれて客足は鈍くなっていった。
 ガジュマルの大木と共に歩んだ約50年。ヨシ子さんは「店を閉めるのは寂しいが地域の人々に大変お世話になった」と感謝の思いを込める。町道の拡張工事に伴い、ガジュマルは3本中2本が伐採され、商店と住宅の一部も2月中には取り壊し壊される予定。
 大名区の下里廣行区長は「大名区のシンボル的存在がなくなってしまうのは寂しい」と名残惜しんだ。
 ヨシ子さんは感謝の思いを込め、10日午後5時から同店で「閉店の集い」を開く。