「ブレーク盤」城南海(きずき・みなみ)『サクラナガシ』


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個性が歴然とする邦楽カバー集

 平成元年奄美大島生まれの女性による邦楽カバー集。カラオケ番組の高得点常連が、『糸』や『三日月』などカバーの定番を歌うのは、安直なヒットの紋切型と思われそうだが、個性は歴然としている。

 全12曲、どれもバラードゆえに正確な音程がよく分かる。同郷の元ちとせのように“グイン”と呼ばれる独特な節回しや、同じ高得点女王のMay J.のように滑らかな歌声が特長だが、両者よりも控え目。また、全曲にピアノや弦楽器の編曲が施されている効果も相まって、どの曲からも穏やかな情景が思い浮かぶ。ゆえに、3曲の桜ソングや『渡良瀬橋』など日本らしい楽曲がセレクトされているのも納得。特に、『桜色舞うころ』など後半でドラマティックに展開する楽曲の感情の配分が絶妙だと感心した。
 全体に知性を感じさせる歌声で、過去オリジナル2作も含め、中高年のリスナーにもオススメ。本作を聞けば、前のめりにならずとも自分をアピールする方法があると学ぶはず。
 (ポニーキャニオン・2778円+税)=つのはず誠
(共同通信)
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つのはず誠のプロフィル
 つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、T2U音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションCDの企画・選曲などを手がける。

サクラナガシ
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