「大ヒット盤」ＫＡＮＡ－ＢＯＯＮ『ＴＩＭＥ』

邦楽ファン全般を取りこみそうな勢い

　２０１２年のレコード会社オーディションでの優勝を経て、デビューした４人組バンドの２ｎｄアルバム。インディーズ時に出した『ないものねだり』の歌詞「ゆらゆらゆらゆら」が繰り返される衝撃から注目されたが、本作では邦楽ファン全般を取りこみそうな勢いがある。

　特に感心したのは曲順だ。大抵、ヒット狙いのアルバムは２曲目から５曲目にシングル曲を詰め込み、後半尻すぼみとなりがちだが、本作はその法則よりもＬＩＶＥのような流れを優先したのか、繰り返し聞きたくなる。
　前半のテクニカルな演奏や、まくしたてつつも少年性の残る歌声も良いが、後半の感傷的な曲想も新鮮で味わい深い。特に『スコールスコール』は“僕、失恋、雨、涙”というポイントのみならず、感情と風景を絡ませる点も松本隆風で上手い。１２曲目『パレード』で、未来に続くように終わるのも後味スッキリ。まさにＣＤショップ大賞入賞の本命盤。本作を聞けば、音楽のある人生を誇らしく思うはず。
　（ソニー・ＤＶＤ付き限定盤３７００円＋税、通常盤２７００円＋税）＝つのはず誠
（共同通信）
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つのはず誠のプロフィル
　つのはず・まこと　１９６８年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、Ｔ２Ｕ音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションＣＤの企画・選曲などを手がける。