クラシック音楽とライブハウスで“お見合い”を


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「爆クラ」でトークを繰り広げる鈴木淳史さん(左)と湯山玲子さん=1月29日夜、東京・西麻布のライブハウス「音楽実験室 新世界」

トークもお酒も楽しめます

 クラシック音楽担当になって1年半。自分自身、馴染みの薄かったジャンルだけに「敷居が高くて…」と尻込みしてしまう人の気持ちがよく分かる。多少なりとも興味のある人は、まずはこんなイベントを体験してみるのもいいかもしれない。

 ファッション誌などで活躍する著述家の湯山玲子さんが、東京・西麻布のライブハウス「音楽実験室 新世界」でほぼ月に1回、開催している音楽イベント「爆音クラシック(通称・爆クラ)」。著名な作曲家、湯山昭さんを父に持ち、「ロックやクラブ・ミュージックにもどっぷり漬かってきた」という湯山さんが、毎回テーマに合わせたクラシックをかけながら、ゲストとトークを繰り広げる。2011年5月に始まって以来、これまで登場したゲストは音楽評論家をはじめ、作家の島田雅彦さんやジャズミュージシャンの菊地成孔さん、作曲家の冨田勲さんら多彩な顔ぶれ。テーマも「甦(よみがえ)るGOS(グレート・オペラ・シンガーズ)」「キャラ萌えクラシック」「クラシックとジャズの相思相愛図」など、なかなかユニークだ。
 1月末の平日夜に開かれた、今年最初の爆クラのテーマは「聴き比べ」。音楽評論家の鈴木淳史さんをゲストに迎え、同じ作品を異なる演奏家で聴いて、違いを楽しむ。例えば、イタリアの作曲家レスピーギの「ローマの松」は、若き俊英指揮者・バッティストーニ盤と往年の大巨匠・トスカニーニ盤で。ライブハウスならではの音響で聴くと違いは「一“聴”瞭然」。空気が震えるような迫力やあまりの違いに会場からは笑いも起きた。「バズ・ラーマンの映画『ムーラン・ルージュ』の映像のような音楽だよね」「(トスカニーニの演奏は)イタリア料理。前菜からこってり出てくる感じ」といった湯山さんのトークも、作品をグッと身近に感じさせてくれる。
 バーカウンターには「バッティストーニ」「トスカニーニ」という名のオリジナルカクテルもメニューに並び、参加者たちはグラスを手に、音楽とトークに耳を傾ける。休憩を挟んで約3時間。バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽~第4楽章」やショパンの「子守歌」、ブルックナー「交響曲第7番~第3楽章」が鳴り響いた。
 まるでクラシック音楽とのお見合いパーティー―。取材しながら、ふと思った。
湯山さんという頼もしい「世話役」に“性格”や“アプローチのコツ”を指南されながら、参加者たちは、自分の「好みのタイプ」を見つけていく。会場には湯山さんのファンだという女性が多く、中には「インターネットで知り、面白そうだったので来てみた」という30代の男性会社員も。5、6回通っているという50代の男性は「(クラシックへの)苦手意識を、気持ちよくほぐしてもらっています」と話していた。
 ありそうでなかった試みだけにクラシック音楽業界の関心も高いようで、この日は都内の某有名音楽ホールの関係者も“視察”に訪れていた。(須賀綾子・共同通信記者)
(共同通信)
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須賀綾子のプロフィル
 すが・あやこ 2013年9月から文化部でクラシック音楽やバレエを担当。