組踊「雪払」85年ぶり上演 切なさ、悲しみ表現


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伊良波大主(右)が継母(左から3人目)を糾弾する場面。ひどい仕打ちを受けながらも継母をかばい続ける百十の行為が継母を改心へと導く=15日、豊見城市立中央公民館大ホール

 【豊見城】豊見城市伊良波などが舞台として描かれた組踊「雪払」(市教育委員会主催)が15日、豊見城市立中央公民館大ホールで85年ぶりに復活上演された。一括交付金を活用した事業。継母からいじめられる主役の百十を金城真次さんが熱演した。

切なさや悲しみが入り交じった百十の心情を細やかな表情で表現した。
 大雪の中、薄手の服で漁に出される場面を「子持節」、魚や貝がたくさんとれるよう願う場面を「東江節」、大漁を喜ぶ場面を「長金武節」で構成し、百十の心情を歌ににじませた。百十の父・伊良波大主は継母の仕打ちに気付き、継母を厳しく糾弾する。ひどい仕打ちを受けながらも継母をかばい続け、百十が継母を改心へと導く場面が最大の見せ場となった。
 その他の出演は継母(海勢頭あける)、伊良波大主(宇座仁一)、百歳大主(金城清一)、馬の草刈(平田智之)の各氏ら。
 観客が分かりやすく鑑賞できる工夫として舞台両袖に字幕を設け、上演前には沖縄芸能史研究会の當間一郎会長による解説があった。一方で、舞台の上から雪を降らすなどの演出で「雪」を強調する工夫がほしかった。
 市組踊保存会の首里良三会長は「満足のいく内容に仕上がっていた。地謡は流派の枠を超えて協力した。以後も発展した形で上演できればいい」と総括した。
 同組踊は戦前、小禄・宇栄原地域で上演されたもので、赤嶺信吉さんが移民先のブラジルから宇栄原へ自筆台本を送った。台本の一部は欠落していたため、當間一郎会長、伝統組踊保存会の島袋光晴会長、豊見城市組踊保存会が中心となって台本を補作し上演した。