「隠れた名盤」石井里佳『鎮恋歌』

独特な世界を思わせる表題曲

　かつてＰｅａｃｈｙとして奥居香作品を歌い、またハロー！プロジェクトのアイドルとしても活動した女性のメジャー復帰作。“名盤”と呼ぶには、まだまだ伸びしろを感じるが、今後に期待して紹介したい。

　表題曲は、バンド演奏と打ち込み音が混沌とする中で、叶わぬ恋心を鎮めようとする女性を描いたミディアム・チューン。時に自嘲気味に、時にシリアスに感情を揺さぶって歌う様子は、初期の一青窈や鬼束ちひろ級の独特な世界を想起させる。
　カップリングは、月光に包まれ内省的になる自分を歌った『ＢＬＵＥ』と、自然の中で緩やかに癒やされる人々を歌った『ＬＯＶＥ』。どちらもエールソングではあるが、繊細な感情を壊さぬよう優しく歌っているのが効果的だ。
　ソングライターとしても活動する彼女だが、今回の３曲はいずれも提供作。しかし、だからこそ、客観視した歌い方で程よく調整していると気付いた。本作から、長年の苦節すら成長のキッカケにするしなやかさを学ぶはず。
　（徳間ジャパンコミュニケーションズ・１１１１円＋税）＝つのはず誠
（共同通信）
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つのはず誠のプロフィル
　つのはず・まこと　１９６８年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、Ｔ２Ｕ音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションＣＤの企画・選曲などを手がける。