「キャラウェイ」に反響 63年「自治神話」報道


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キャラウェイ高等弁務官の発言を報じた琉球新報の縮刷版を手に語る比屋根照夫さん=7日、浦添市の自宅

 菅義偉官房長官との会談で翁長雄志知事が引用したキャラウェイ高等弁務官の「自治神話論」発言があった1963年3月、高等弁務官の発言を批判的に報じた琉球新報の社内には緊張感が広がっていた。

当時、琉球新報記者だった比屋根照夫さん(75)=琉球大名誉教授=は7日、取材に対し「当時の弁務官の絶対的な権力を批判することは困難であった。それでもこの発言は、見逃せないものとして新聞社に緊張が走った」と当時の空気を説明する。
 琉球新報は63年3月6日付朝刊の1面トップで発言を報じた。取材していた琉球新報記者の外間正四郎氏が一報の記事を書いた。連日大きく取り上げ、現在の県議会に相当する「立法院」でも議論になるなど、自治権の問題を提起し世論を喚起した。
 キャラウェイ氏の発言があったは63年3月5日、那覇市の米軍将校クラブ「ハーバービュークラブ」(現在のハーバービューホテル)。同氏は講演で「(沖縄住民の)自治は神話だ」と述べ、沖縄の自治権拡大を認めない姿勢を示した。
 比屋根さんは米統治下の圧政に関し「新聞人も怒っていた」と話し、キャラウェイ発言がさらに日本への復帰運動を高める契機になった状況を説明する。
 この問題でキャラウェイ氏が更迭された後は米側の姿勢も軟化した。比屋根さんは「主席公選や労働組合の活動も認め、米側も徐々に引いた。民主主義の基本に立たなければ統治はできなかった」とする。一方で当時と現在を対比させて「今の日本政府は(辺野古移設を強行し、民意を)一顧だにしない」と批判した。
 比屋根さんは「翁長メッセージは、戦後沖縄に内在する沖縄の魂の苦悩を日本政府に堂々とぶつけた画期的な事例だ。日本の戦後史、自治体史に残る発言になることは間違いない」と指摘する。
 知事が訪米やケネディ米駐日大使との面談を調整していることに関し比屋根さんは「米国の民主主義的な価値観に訴えることが大切だ。米国は異論を聞く余裕がある。日本政府のように狭量ではない。正当な主張には耳を貸すはずだ」と米側の世論を喚起する必要性も強調した。