全学徒の刻銘板を 梯梧同窓会、要請も見通し立たず


社会
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刻銘板建立予定地に立つ梯梧同窓会の上原はつ子さん(左)と吉川初枝さん=糸満市米須

 戦前那覇市泊にあった私立昭和高等女学校の同窓生でつくる梯梧(でいご)同窓会(稲福マサ会長)は、沖縄戦で動員された21の学徒隊で犠牲になった約千人の名前を記す刻銘板の建立を県に求めている。これに対し県は、慰霊碑で学徒隊の証言をスマートフォン(多機能携帯電話)などで聞ける仕組みを導入する予定だ。

 県の事業は2015年度の「沖縄戦継承事業」。スマートフォンなどで読み取れるQRコードを案内板に掲載して慰霊碑などに設置する予定。平和援護・男女参画課の担当者は「刻銘板建立に代わり、この事業を推進したい」と話している。
 梯梧同窓会の刻銘板建立の陳情は2013年4月に県議会に出され、文教厚生委員会で継続審議となっている。建立の見通しは立っていないが、同窓会の上原はつ子さん(86)は「10代の若い尊い命が戦場に動員され亡くなっていった事実を一人一人の名前を刻んで後世に残したい。戦後70年を機に実現してほしい」と述べ、諦めていない。
 沖縄戦で廃校となった昭和高等女学校の生徒も学徒動員され約60人が犠牲となった。上原さんらは各地にある既存の各学校慰霊碑は取り壊すことなくこれまで通りとし、それらの慰霊碑とは別で学校別に学徒の犠牲者名が刻まれた刻銘板の建立を求めている。「県がとりまとめなければまとまらない」と県のリーダーシップに期待を寄せる。建立場所は糸満市米須の梯梧の塔とひめゆり平和祈念資料館の間にある私有地で地主の了解も得ている。
 県議会の喜納昌春議長らにも何度か面会して要請している。喜納議長は「若い学生が学徒動員されたことを後世に語り継いでいく必要がある」と話し趣旨に理解を示している。沖縄師範学校在学中、鉄血勤皇隊として動員された大田昌秀元県知事(89)=沖縄国際平和研究所理事長=は「当時法的な根拠なく学徒動員された。そのことを知らない人も多い。アイデアとしては良い考えだ」と賛同した。
 一方で県の予算を確保するのは簡単なことではないとし「他の学徒とも連携し県議や市議、国会議員らにも協力を依頼し具体的な見積もりを出して足りない部分は寄付を募るという方法もある」と助言している。
(知花亜美)