「隠れた名盤」水谷豊『時の旅人 2015』


社会
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体温を感じさせるウエットな歌声

 約5年ぶりとなるCDは邦楽カバー集。とはいえ、これまで以上に新鮮に響く。全10曲、本人が“青春時代に聴いた歌”というコンセプトだけで、年代もヒット感も揃えすぎず、フワっとまとめた感じが彼らしくて良い。

 さらに感心したのが、ウエットな歌声だ。ドラマ『傷だらけの天使』挿入歌だった『一人』は、惜別の思いがにじんでいるし、エールソングの大定番『上を向いて歩こう』も、「泣きながら歩く/一人ぼっちの夜」だったと、あらためて気付かされた。ここでの水谷は、涙もろく人情深い。つまり、以前の歌声は“副業歌手”ゆえの朴訥さが良かったが、本作では“本業俳優”ゆえの体温を感じる。
 クライマックスは、本人が切望した『川の流れのように』と、続く『カリフォルニア・コネクション』の再録。まさに“時の旅人”という題の映画を見た後、ボサノバ風の編曲で爽快に送り出される感じがした。本気で生きたいと願うほど、涙が伴うことを、本作から気づかされるはず。
 (日本コロムビア・2500円+税)=つのはず誠
(共同通信)
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つのはず誠のプロフィル
 つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、T2U音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションCDの企画・選曲などを手がける。

時の旅人2015
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