奪われた人生に涙 伊江島灯台殉職者慰霊式 灯台長の遺族が初参列


社会
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他の遺族らと関連する新聞記事を見ながら追悼の気持ちを共有する荻原成則さん(左)=21日、伊江村の伊江島灯台

 【伊江】70年前の沖縄戦の激しい空爆で破壊され、職員とその家族8人が犠牲になった伊江島灯台。毎年、犠牲者を追悼する「伊江島灯台殉職者慰霊の式」が行われている。遺族の参列が年々少なくなる中、21日に行われた式には、戦前最後の灯台長となった田中吉樹さんの妹の孫に当たる荻原成則さん(52)=北海道=が妻の順子さん(52)と共に初めて参列した。

 荻原さんは式の最中、灯台を最後まで守ろうと全うした田中さんに気持ちを重ね、目の前の海に米軍の艦船が浮かぶ当時の光景を想像した。
 米軍の船からも航行上の目印となる灯台を守ることに「葛藤もあったかもしれないが、誇りを持って最後まで仕事を全うしたのでは」と思いを巡らせた。
 2008年に半年間だけ県内で勤務したことがある。訪れた平和の礎で沖縄の姓に挟まって、本土の姓である田中さんの名前を見つけた。「遠い所で亡くなったんだなあ」。自分でも表現できない気持ちに包まれ、涙があふれた。
 09年4月に県内の知人から届けられた新聞記事がきっかけで慰霊式を知って以来、参列への思いを強めていた。戦争体験者ではないが、子に戦争について自ら伝える役目があると感じている。
 「伊江島で、家族と一緒に誇りを持って暮らしていた。(犠牲者数など)数字だけでは分からない事実を伝える必要がある」。荻原さんはかみしめるように話した。(長浜良起)