県教育庁、戦跡を県文化財に 一括「群」指定も 


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
市町村指定の戦争遺跡(クリックで拡大)

 県教育庁は本年度、沖縄戦の戦争遺跡を県の指定文化財にする作業に着手した。県内にある戦争遺跡の文化財指定はこれまで市町村のみだったが、戦後70年になり、風化が進む遺跡の保護を強化する。自治体にまたがって複数存在する遺跡を一括して指定することも可能になるといい、教育庁は「『県内において重要』という評価が与えられることになり、価値がさらに高まる。より良い保存・活用が期待できる」と意義を説明している。

 教育庁によると、県内では2014年度現在、17カ所の戦争遺跡が市町村指定の文化財となっている一方、県指定の文化財はない。県指定には全県的な実態把握が必要となり、遺跡の数が膨大で、所在地が広域になることから、詳細調査に時間がかかっていた。
 10~14年度に県立埋蔵文化財センターが県内の戦争遺跡について詳細調査を実施したところ、指定検討の基礎データがそろい、教育庁は本年度から戦争遺跡の文化財指定作業に着手することを決めた。
 指定は沖縄戦時に使用された日本軍の建築物や、住民が避難したガマを想定。市町村に点在する関連性の高い遺跡については、市町村では各遺跡を自治体内で指定することしかできなかったが、県が指定することで「群」として一括指定することが可能になり、文化財的価値の向上も見込める。例えば住民が広域に避難した経路が分かる複数のガマや、日本軍が建設した大掛かりな要塞(ようさい)などが群指定の対象として考えられる。
 戦後70年になり、県内各地で戦争遺跡の風化が進み、ガマへの不法投棄など、記憶の薄れを象徴する事態も起こっている。多数のガマが残る糸満市教委の担当者は「沖縄戦の体験者が高齢化する中、記録として戦争遺跡を残していく意義は大きい。県がモデルケースを示してくれることで市も指定をしやすくなる」と話している。(中里顕)