障がい者の沖縄戦証言収集へ 県視覚障害者福祉協


社会
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 沖縄県視覚障害者福祉協会は、視覚障がい者の沖縄戦証言の収集を始める。戦中に障がい者に対する偏見もあり、戦後も証言が限られていたが、戦後70年になり当事者が高齢化していることから取り組みを始めることにした。

収集した証言の公表を目指しており、同会の山田親幸会長(80)は「証言を発信することで、視覚障がい者の自立につながってほしい」と話している。
 山田会長によると、視覚障がい者の沖縄戦体験は、市町村史にもほとんど記述がなく、正確な実相があまり伝えられてこなかった。戦中、身体に障がいのある人が差別を受けていた実情も指摘されており、証言をする人も限られていた。
 生まれつき強度弱視の山田会長自身も沖縄戦体験者で、講演会などで自身の経験を語ったり、ほかの視覚障がい者から体験を聞いたりしてきた。家族が頼りで、母親の腰帯をずっとつかんで避難を続けた人や家族の勧めで女装をした男性もいたという。
 一方、これまで同会で証言を収集するといったことはなく、沖縄戦から時間が経過する中でこれまで語ってきた人が亡くなるという現実に直面した。戦後70年に合わせ、これまで体験を語っていなかった人にも証言をしてもらい、あまり知られてこなかった実相を伝えようと収集活動をすることに決めた。
 「思っていることを自由に語ってもらいたい」と収集は一対一の面談ではなく、障がい者が集まってお互いの経験を語り合うことにしている。集まった体験談の公表形式は未定というが、山田会長は「視覚障がい者の発信を通じて、ほかの障がい者にも同様の活動が広がってほしい」と話していた。(中里顕)