【チャイナ網路】サックスの故郷


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 クリントン前米大統領が昨年台湾を訪れた際、陳水扁総統は記念品としてサキソフォンを贈った。台湾は世界の3分の1を生産するサックスの一大生産地。中でも、大小15のメーカーが軒を連ねる台中県后里郷には、“サックスの故郷”の異名がある。
 同地の月生産量は、3千本。ほとんどが海外有名メーカーの委託生産だ。中高級機種で、卸値は5万円から10数万円だが、いったん有名メーカーの名が付けば、価格は数倍。中には60万円を超すものもある。
 きっかけは、戦後間もなくのことだった。サックス一本の価格で畑が買えた時代。運悪く火事で焼けたサックスをなんとか修復しようと試みたことから始まった。古い銀貨を溶かし、溶接に成功した張連昌さんこそ、今も生産も続ける「文燦楽器」の創業者だ。
 業界では信頼のメーカーでも、一般には無名の受託生産稼業。他業種同様、中国の急速な追い上げが脅威だ。分業体制の零細メーカーを結集し、自らのブランドを立ち上げること。コンサートなどのキャンペーンを展開する生き残りプロジ
ェクトが始まっている。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)